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Mint Julep

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2006年12月11日 (月) [長年日記]

_ [本の話]森見登美彦応援ペーパー

 わたしは日曜日にブックファースト渋谷店でGetしたが、同じ店に行っても「どこにあるか分からなかった」という人がいた。まあ、書店員に訊けば確実なんだろうけれど、その人がもしかしたら把握してなかったり、老いてないお店だったりすると訊くのも無駄骨かも、なんて思っちゃったりするんだよね。通常こういうものはその人の本(この場合だったら『夜は短し歩けよ乙女』)の側に置いてあるとか、POPが立ってたりするのだが、私が見る限りではそれもなかった。「ここで置いてなかったらどこにあるんだよ」とレジで会計をしようとしたらカウンターの真ん中に青いA4用紙を4つに折った紙が。ビンゴでした。

 一応、森見氏のはてダで置いてある店は告知してあるようなので、お近くの書店へどうぞ。

 内容は、森見氏による『夜は短し〜』刊行の辞と各書店員の推薦メッセージ(男子と女子にちゃんと分かれている)、そして裏側は手書きの『夜は短し〜』京都マップなのだった。力作! マップの情報自体は森見氏によるものだそう。京都に行った際でも少し歩いてみるのもいいかも。

_ [書店話]来年早々、青山ブックセンター丸ビル店がオープン

 丸の内に出展するとのことでスタッフ募集していたのは知っていたけど、丸ビルだったんだー。ここって丸善が入っていたと思ったんだけど、もしかして撤退なのかな? 丸善は近くのOAZOにも大きな店舗を持っているし、丸の内で仕事しているときは帰りにここに寄るので、選択肢が増える&職場に近いところに使えそうな書店ができるのは大歓迎なんだけど。

 しかし、破竹の勢いですな。経営のほうはどうなんでっしゃろ。

_ [イベント]著作権保護期間延長を考える国民会議第1回シンポジウム@東京ウィメンズプラザ円形ホール

パネルディスカッションの様子  仕事が終わってから駆けつけたので第2部のパネルディスカッションからの参加。空いている席がなかなか見つからないほどの大盛況でした。

 並びは写真のとおりだけれど、左からモデレータ役の中村伊知哉氏(慶應大教授)、田中辰雄氏(慶應大経済学部助教授)、富田倫生氏(青空文庫の中の人)、平田オリザ氏、松本零士氏、三田誠広氏、山形浩生氏。それぞれが自分の立場と意見表明をひととおりやってから議論に入る。右側の山形さんから。というか、自分がメモを取った範囲でなので、かなり端折っていると思う。ちゃんとしたものが出てくると思うので、そちらを是非参考にして欲しい。

山形:自分自身、クリエイターとしての立場と、享受者の立場というものがあるし、ほとんどの人はそうなのだと思う。どちらの立場に重きを置いて語るか、になる問題。果たして、遺伝子の呪縛(子孫による著作権管理)を長くすることが果たして幸せなのか?

松本:漫画家だから賛成。信念のために歯を食いしばって書いている。家族を守るために。だから孫子の代まで(権利の確保を)伝えたい。古典と現代の作品は違う(から、比較的近い時間の作品は二次創作などに慎重であるべきだ、という話?)。改変、改悪は許されない(改善は無いの?)。先人から学んだことへの敬意。表現者は「永遠の浪人」。若くして亡くなった仲間もいて、その遺族のことを思えば70年でも短いくらい。(語られていることが自分の意見にことごとく反しているとなかなかちゃんと聞き取れないものだな、と思ったよ。いたたまれなかった)

平田:戯曲は二次利用が前提で作られていることが多い。著作権を保持している遺族が使用を拒否すれば上演できない憂き目に。遺族の拒否は本人の意志(遺志)なのだろうか? 文化の発展を阻害する片棒を担いでいいのだろうか? また、50年から70年へ、という根拠が薄い。

富田:青空文庫は当初「パソコンの画面でテキストを読む」ことを想定していた。しかし、いろんな人からメッセージがあった。ブラジルに移民した日系人、中国、韓国の若者、日本語教育を戦前戦中に受けた元植民地の人びと。日本語や日本語のコンテンツにアクセスするのが困難な人が利用している例も多い。しかし全く予想していなかったのが障害を持った人たちのための利用。テキストの形式になっているので読みとって音声で聴いたり、点字にしたりの元データとして使うことができる。我々にとっては1月1日というのは著作権が切れる区切りの日なのでとても大事な日だ。(来年、再来年に切れる人の例)これらの公開準備を進めているが、公開されないどころか、遡って延長が適用されるようであれば、現在のコンテンツの約半分は公開できないことになってしまう。

田中:経済学の立場から、実証的に調査をし、実態を確認する必要があると思う。

  1. 期間延長前後の変化を見る
    1. 35年→50年、50年→70年の変化の後で、作品数あるいは売り上げが増加したかどうかを調べる。増加していれば、保護期間延長が創作意欲を刺激するという主張が裏付けられる。
  2. 保護期間の延長で創作意欲(投資意欲)が上昇するのかどうかアンケート調査をする
  3. 作品のライフサイクルからの推定
    1. 死後50年〜70年の間の期待売り上げ-保護期間を70年に延ばすことで得られる利益
    2. 死後70年の間に絶版になるものの数-保護期間を延ばすことでの不利益(死蔵の不利益)
  4. パブリックドメイン化の利益
    1. 廉価版や企画ものなど多用な形で供給されるものの利益
    2. 再創造の利益
  5. 国際貿易の利益不利益
    1. 輸出と輸入のバランスで比較
    2. 仮に米国が相互主義をとって日本だけ保護期間50年年とした場合のシミュレーション
    3. 戦時加算撤廃を認めてくれた場合のシミュレーション

三田:ヨーロッパでは著作権保持期間は70年だと聞いているので、国際的に足並みを揃えたい。

 一体、何の対立なのだろう、という問いに山形さんは「クリエイター、利用して欲しい立場、利用したい立場の問題。アイデンティティをどこに置くかだろう」とコメントする。平田氏はチェーホフ(彼は40代で亡くなっている)の例を出せば、富田氏は「対立ではないのでは?」と疑問を呈す。三田さんは「少し褒めて欲しい」と言っているのだと思うが、そこには共感するとも。ただ、だったら別に保護延長という方向じゃなくとも構わないではないか、と畳み掛ける。そこで芥川龍之介「後世」を読み上げる。これは効果的だなあ、と感心した。「保護延長をして後世の人に利益をもたらすことが決して良いこととは思えない。電子化することによって「褒める」ことのお手伝いはできるとのこと。

 松本氏の主張は、ひどく感覚的で説得性に欠けると感じた。「永遠の浪人」だの「家族のために歯を食いしばって孤独に耐えてきた」だの「若くして亡くなった人の遺族を守りたい」だの、著作権保護延長と直接関係ないのでは?といった話。もしかしたらもっと違うところに狙いがあるのかも知れないのだけれど、抽象的すぎたりやけに具体的すぎたりして、うまく一般化できないという感じ。賛成派にもうちょっと議論ができる論客を持ってこないと今後ちょっときついのではないだろうか。この主張にも田中氏からは「長く残したい、広く知らしめたいのであればパブリックドメイン化した方が良いのでは」とツッコミを入れられてしまった。

 また、三田氏からは「その人の仕事を知らしめるのに全集を出版するという方法があるが、既に青空文庫などで無料で公開されているとその編纂に携わった人たちが報われない」との話が出た。これにはその前に出た富田氏の意見「著作の発表を出版業界だけに任せてていいのか?」という疑問の方がやはり印象に残る(大体、全集を売るのならそのテキストデータも一緒にいただきたいものだね)。ここで、著作権延長があってもアーカイヴ化したければそれぞれに問い合わせればいいのではないか、という提案があったが、本当にそんなことが出版社のような金も時間も(ある程度)使える組織じゃない青空文庫、または利用したい個人に門戸が開かれているとはとても思えない。三田氏自身青空文庫の活動を評価する、と言っているが、だったら自分の作品を青空文庫に提供することは考えないのだろうか(ということは会場の大部分が突っ込んだところだとは思う)。青空文庫に収録されてものはパブリックドメイン化されているという明確な基準に今はなっているが、そうじゃないことになると、そこから更に加工しようとした場合に問題が出ることもありそうで、そこについても難しいことは多いのではないかと思われる。

 保護期間延長になっても、著作者それぞれが期間を縮めたいなどの希望を遺書に入れればいいんじゃないかという意見もあったけど、デフォルトが50年か70年かって、案外重要なところなんじゃないだろうか。大体、こうやって私が書いている文章だって何も考えなくても著作権は生じるのだし、それをいちいち私は遺書を書かなくちゃいけないのだろうか。また、こうやって無意識に書いていたり、自分は金にならないことをやっていると思っていたりで保護期間が他人に影響を与えると想像もしていなかった人間が突然死んでしまったときには一体どうするのだよ。基本的に壇上で喋っている人たちは著作物で食っている人たちで、だからそういう人たち向けのことばかりに考えが及ぶのだと思う(山形さんや富田さんは血別の立場のことも述べているのだが)。後で会場からとった意見の中でも、お金にならないし発表の場もほとんど無い俳句や短歌、論文なんかもあるんだ、という話もあったな、そういえば。

 国にとっての得失についても議論があった。世界基準である70年にしたいという話は、ヨーロッパが中心のもので(アメリカもそれに追随しようとしている訳だが)あまり説得性がないのではないか、とか、先進国である日本が(著作物を大切にするという?)手本を示さなくてどうするんだ、という意見もあった。平田氏は、どうせだったら延期される20年の間に得られる著作権料は、半分を若手芸術家育成基金に、半分をユニセフに寄付すればいいのでは、という具体的提案が出た。松本氏からは「途上国とか先進国だとか、驕っているのではないか。日本だっていつ追い越されるか分からないんだ」という松本氏の意見も出たが、前半はいいとして後半はちょっと……。

 会場からの質問や意見もとったのだが、写真家協会(?)の人がひどく立腹していた……が、怒りしかこちらには伝わってこない。自分たちがないがしろにされている、ということなのだろうか? 壇上の賛成派は子供がいて、反対派はいないのではないか、という素っ頓狂だが色々考えられる指摘もあった(まあ、実際その通りで「だから孫子の代までなんて要らない、と言うのだろう、と)。

 また、私の座った近くにいた人が反対派の意見に盛んに拍手を送っていて、この人は一体どんな人なのだろう、と思っていたら、この場で発言があった。この人はクラシック音楽の指揮者(千秋様!と言いたくなってしまうな)で、著作権がまだ保持される音楽の演奏では莫大な費用がかかるという話を。それはあまりにも大変なので新しめの(著作権が切れていない)作品を演奏するのは止めようという話になっている。このままでは早晩、演奏できるクラシック音楽がどんどん減っていくことになるぞ、という話。それは困るなー。この人はイギリスの大手出版社と著作権に絡んだ裁判をしたそうで、訴えられ、弁護士に相談したけど誰も引き受けてくれなかったとか。結局彼は弁護士なしで最高裁まで持ち込み、全部勝ったらしい。そんなすごい人が近くに座っていたなんて知らなかったよー。この人は終わってから他の人たちと名刺交換していたようなので、次があれば出てくるかも。この方は名前だけ書き留めておいたのだが、mixiなどでこのことを書いたら調べてくれた人がいたので特定できた。この方らしい。ああ、確かにこの通りのエピソードだったし、公式サイトの写真の風貌そのままだった。

 最後に、レッシグ博士からのメッセージを読み上げて閉会としようとしたのだが、松本零士から待ったがかかった。「ていうかそのレッシグって何者? 大体、こういう終わり方(レッシグ博士のメッセージを読むことで、あたかも反対派主導の論調で終わりそうだった)するんだったら私はこの席には座らなかった」というような話には思わず拍手。確かにこの終わり方は不公平だ。でも、その後結構いいこと言ったように思うのだけれど、その肝心な内容を覚えていないorz*1。その後を三田氏が引き取って、国会だかどこかの委員会だかに「障害者向けには著作権を行使しない」といった意見書か提案書を出した、という話をされた。まあ、そこは考えているようだけれど、まだまだ具体的な仕組み作りの段階には行ってないんだよな、この辺りって。多分。

 確か平田氏が言ったのだと思ったが「血縁に(著作権を)残すよりは、文化の川にかえしたい」という言葉が耳に残った。

 松永英明さんのところでも意見が出ているけど、著作権を死後も延々残すよりは生きている間の権利保護をしっかりやって欲しいな、と思う。細々として「報われない」と思うからこそ、の意見もあるのではないだろうか。また、著作権保護期間延長には、お金ではなく、「コントロール下に置いておきたい」気持ちも強いのだとは思う。ただ、これも一体遺族が著作者の遺志を受け継いでいるのかは不明だし、だったらそういうことをきっちり管理できる組織を作った方がまだいいんじゃない……って、あ、下手するとJASRACになっちゃうか。何にせよ、あまりにもシステム化されてない状態が長く続きすぎたのだと感じるのだけれど、この辺、どうなのだろう。

 今回は1回目となっているし、この短い時間でこんな膨大な問題を語ろうというのはちょっと難しかったと思う。これからもこういう機会が沢山あるとブラッシュアップされていく可能性はあるのではないだろうか。というか、せめてあと1時間余裕があれば何か飛び出たかも知れないね。そんな意味では余韻を残しつつの解散となった。

参照:

*1 まあ、お互い感情的にならないで冷静に議論しようよ、といった趣旨だった模様

_ [買い物] FUJITSU スキャンスナップ FI-S500

 ビックカメラ渋谷東口店にて購入。ここはお店の人がなかなかいない&捕まらないのでいつも嫌な思いをする。時間もかかるし。誰を捕まえればいいのか分からないんだよねー。人が多すぎて声かけられるのがウザいのとどっちがましだろう?

 商品自体は小さくて軽いのに、箱は結局倍くらいの大きさで拍子抜け。電車の中でも邪魔そうだったので各駅停車で帰ってきたら(あんまり急行使わないけど)途中で座れて寝ちゃって、隣の駅で飛び起きた。

 帰るのが遅かったしいろいろやることもあるので、今日のセットアップは無し。明日にでも何かスキャンしてみますかね。ああ、それにしても分厚い紙の束をスパッと切れる省スペースのカッターっぽいのが欲しいなあ!

本日のツッコミ(全3件) [ツッコミを入れる]
_ an-shida (2007年01月24日 (水) 19:13)

著作権シンポジウムでの指揮者の方のお話について質問させてください。<br>「このままでは早晩、演奏できるクラシック音楽がどんどん減っていくことになるぞ、という話。」ここが理解できませんでした。<br>保護期間が70年になっても、減っていくというのは無いと思うのですが、どういうお話であったか教えていただけないでしょうか。

_ にじむ (2007年01月25日 (木) 11:41)

an-shidaさん、ご質問ありがとうございます。<br>わたしも聞いたままを書いて「ああ、確かに大変そうだ」みたいなぼんやりした感想だったのであまり突っ込んでなかったのですが、おそらく「どんどん著作権期間延長がされていく風潮」を鑑みて、ということではないかと考えました。もし、趣旨についてきちんとお知りになりたいようでしたら、杉山さんご本人に直接聞かれるといいのではないでしょうか。ウェブサイトにはメイルアドレスも明記されているようです。

_ an-shida (2007年01月28日 (日) 16:47)

ありがとうございます。にじむさんがおまとめになって「どんどん減っていく」ということかと思っていたのですが、杉山さんの直接のお話なのですね。どうもありがとうございました。