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2009年01月01日 (木) [長年日記]

_ [Life]あけましておめでとうございます

 えーと、ホントはこういう日記を午前7時くらいにアップしようと思っていたのに、初日の出を見ようと思いついて、初日は朝早くに出るはずだからと夜中からワインを飲み始め、しかもそれがすごく効いてしまってぐらぐらになり、30分だけ横になろうと5時半頃に床についたらそのまま11時。信じられん。年越しは、年末に一挙放映していた「プロポーズ大作戦」の視聴で明けました。なんか、ラストに非難囂々という話を聞いたけど、どこで不評だったの? あのタイミングでやっとか!ということ?オープンエンディングで終わったこと? その後は去年のM-1グランプリなどを観ておりました。

 まあ、その辺は後日談含めてスペシャルがあった(それも続けて放映された)ので、そこが問題だとしたらある程度落ち着いたかも知れないんだけど。しかし天使役の三上博史がどう見ても悪魔にしか見えなかった。元気な姿を見られて良かった。これ、本放送の時は退屈に思えてすぐに録画だけに切り替えたのだけれど、ちょっとPCがあかんことになって観られなくなっていたのでやっと、という感じ。わたしは高校は男女別学だったので、ああいう状態になったのは大学の時や社会人になってからだったりするんだけど、微妙に恋愛も混ざり合ったでも底まで踏み込まないああいう関係って、なぜか甘美なんだよねー。ああしかし、君たち気づかなすぎるだろう! 普通、どんな意地っ張りでもあそこまで見れば納得しますよ。

 今年最後に読み終えたのは、角田光代の『森に眠る魚』。これは、数年前に文京区で起きた例の事件にインスピレーションを得たのだと思うが、それだけに終わっていない、女としてはいろいろと心を締め付けられる小説でした。どの登場人物にも、わたしがいる。そんな感じ。年をまたいで読んでいるのは古川日出男『聖家族』。いや、これはここに持ってこないと、というところと、年内に読み始めなければ気が済まない、ということで。ここのところ飲み過ぎなのかあまり本が読めてないので、戒めも込めています。

 去年の心に残るニュースは、別途やった方がいいのかな。って、あれに決まってるんですが。去年一年は、これまでに較べてもいろんな方にいろんな方を紹介していただき、憧れの人に会えたりもして、自分の人生これで大丈夫なのか、疑うほどいい目に遭わせて貰った日々でもありました。

 去年のフォローや今年のことなどは追々。えぇと、今年もよろしくお願いいたします。あー、自分的初日の出は、明日かな。初詣もまだ駄科。


2009年01月02日 (金) [長年日記]

_ [季節]自分的初日の出

人にとっては意味がない、ただの朝日  昨日、油断して寝てしまったので、今日はとりあえず寝て、目覚まし時計で起床。上にコートを引っかけた状態でデジカメを抱えて屋上に行った。誰もいない、さすがに。

 最初はそうでもなかったんだけど段々寒さがしみてきて、とりあえず頭の方はフードをかぶってみた。6時過ぎから姿は見えないのに東の空は明るく、それは結構な時間変わらない。7時近くになってからようやっと変化が起き、どんどん姿を現してくる。チラチラと強い光が輪郭を作り、あふれ出る陽光が目を刺す。ずっと光源を見つめていたので、だいぶ目をやられてしまった。

 左手を見ると、遠くに高層ビル群。今年はコクーンビルのおかげで、西新宿がわかりやすくなったような気がした。


2009年01月04日 (日) [長年日記]

_ [季節]初詣

明治神宮の初詣の様子竹下通り  今年も明治神宮に行ってきた。三が日も過ぎたしそろそろ空いてるだろうと思ったら、結構な人混みでびっくり。しかし、それよりもごった返しているのは竹下通りのようだった。お賽銭を投げ入れるまでは、大体30分くらいかかったかな。途中、チッチとサリーのような身長の差が大きいカップルを見かけ、微笑ましく思った。その帰りに境内で破魔矢(違う名称だったけど、忘れた)とおみくじと夫のお守り(まさに神頼み!)を買う。ここのおみくじは吉凶が示されてないのでいまひとつギャンブル魂がふるわないのだが、まあ、そういうのが欲しければ他の神社に行けばいいことだろう。

けんけつちゃん

 参道と内苑を繋ぐ橋を渡ったところで、献血コーナーができていた。そこにいたのがこの「けんけつちゃん」。ウェブサイトを見るとちっちという名前らしい(笑)。じゃあ、「けんけつちゃん」ってなんだよ。妙にかわいいゆるキャラなのだが、よく見ると血液の雫を頭に刺し、そして血染めの服を着ているという風体にも見えるので、案外武闘派なのかも知れぬ。

_ []表参道でエコアベニュー

エコアンベニューのインスタレーション

 行き帰りに表参道を歩いたのだが、歩道にキャンドルのケースがぽつぽつ置かれていた。エコ活動の一環らしい。夜になったら中のキャンドルが灯った。

 そういうパフォーマンスなんだろうが、街灯や沿道のお店の明るさはいつも通りだと思うので、どこがエコなのか今ひとつ分からないのであった。これだけの明かりで歩けないとは思うのだけれど。

 そういえば、歩道橋を渡っているときに毎年気になっていたことがある。この歩道橋の下、ちょっとしたスペースになっているのだが、お正月になるとここに行列ができるのだ。お店の人らしきスタッフにより整然とした列を作り、時々数人単位で路地に消えていく。最初はバーゲンか何かかと思ったのだけれど、どことなく様子が違う気がする。並んでいるのは殆ど女性ではあるのだが、結構年代のばらつきはあるかなあ。確かめに入って止められないだろうか不安だったが、すんなり通過。その先に見えたのは、ジャニーズショップでした。

 なるほど、みんなお年玉を貰ってここに来るんだね。だから混雑すると言うことで入場制限をやってるんだ。因みにこの先には、女性向けのVOLKSのフィギュアショップがあった。


2009年01月05日 (月) [長年日記]

_ [仕事]仕事始め

 という訳で、久しぶりのお仕事。こんなに長い休みは本当に久しぶりだったのに、全く活用せずに終わっておる。

_ [買った本]買った本

 ブックファースト渋谷文化村通り店にて。

 「SFマガジン」は、伊藤計劃インタビュー目当て。「ユリイカ」は買いそびれていたので。「図書新聞」は、今年から栗原裕一郎さんの文芸時評が始まったので。文中で「後の資料として書く」と書かれているけど、それは『〈盗作〉の文学史』でつくづく考えたことなのだろうなあ。

 時評は月ごとということは、月に一回買えばいいのかな(悪い読者)。


2009年01月06日 (火) [長年日記]

_ []グリルくらもと(静岡市)

グリルくらもとアプローチ

 またもや静岡出張だったので、ランチはこちらにした。半年前に来たときに行きたかったのだけれど、そのときは生憎定休日でシャッターが下りていたのだ。まさかこんなに早く再訪する羽目になるとは思わなかったのだけれど、不幸中の幸いといったところか。場所は、呉服町通りをちょろっと入ったところ。この界隈のランチ情報を検索してたら、こちらのオムライスがおいしいという評判に当たったのだ。それまで特に洋食屋を好んで通っていたり、オムライスをあちこち食べ歩いたりしたこともないので比較はできないのだが。

 お店は地下にある。濃紺のカーペットを敷いた階段を降りていくと、ガラス張りで店内が見える。入って左手がテーブル席が数席(4人席×3、2人席×1くらいだったかな?)があり、右手が厨房と、それを円く取り囲んだカウンター席。おひとりさまにも優しい作り。カウンター席に通されたが、セミオープンキッチンとなっていて厨房を垣間見ることができるのが面白い。スタッフは、厨房にはシェフとアシスタントのふたり、ホールは女性ふたりの体制で、皆てきぱきと見ていて気持ちいい仕事をしている。この日のお勧めランチ(2,100円)は海老のサラダ仕立てにオムライス、そして飲み物(コーヒーor紅茶)なのでこれをいただく。

前菜オムライスオムライス

 前菜の海老のサラダ仕立て(写真がひどく下手なことに後で気付いた。済みません)は冷たいお皿にしゃっきりお野菜、ソテーした温かい海老にバルサミコソースがかかり、うにペースト(多分)をトッピングしたもの。酸味をうにの甘みが中和してくれる感じでおいしい。空いた皿を下げるときには厨房に合図をすることになっているようで、そうすると次の皿のタイミングが分かるということなのだろう。それほど待たずにオムライスが出てきたが、これまたなめらかな表面が美しい一品。中ほどを割ってみると、内側はふんわり半熟卵が現れる。チキンライスはまろやかでタマネギのアクセントがおいしい。上にかかったトマトソースは酸味が少々強めで、優しい味にエッジを立ててくれる感じ。期待通り、いやそれ以上のおいしさだった。ランチに2000円はちょっと贅沢だけれど、たまにはいいかも知れないなあ。

 お店の雰囲気もよく、居心地のいい店でございました。また、こちらに来たら立ち寄ってみたいし他のメニューも試してみたい。この日はいただかなかったけれど、デザートの「ほんのり温かいプチショコラ」が「絶品!」と添えられていたので、いつか試してみたい。


2009年01月07日 (水) [長年日記]

_ [買った本]買った本

 ブックファースト渋谷文化村通り店にて。

 今日は雑誌だけにしようと思っていたのに、『新婚合宿』文庫版を買うのを忘れてたことを思い出して、ついでに購入。この本、自分自身結婚してそれほどしないうち(といっても1年は経ってるな)に出たこともあって、当時頷きながら読んだ覚えがある。「育ってきた環境が違う」ふたりが一緒に生活するのだから、どうしてもすりあわせしたり、妥協したりしながら調整していく部分が出てくる。しかも、夫婦という初めての役割とユニット結成をするのだから、いろいろ大変なのだ。といいつつ未だに合宿状態なのだが、うちは。そういうあれこれを描いているので、結婚に恐れを抱いてる人、幻滅してる人、期待を持ちすぎている人、自分も経験してだいたい分かってる人も読むといいよ。

 「すばる」はずいぶんと久しぶりに買ったよ。海猫沢めろん先生の新作が載ってるよ。あと、去年韓国で行われた第一回東アジア文学フォーラムのことでいくつか記事が出ている。「 文学界 2009年 02月号 [雑誌]」にもメンバーを違えて記事が出ているけど、こっちは買うかどうか迷い中。


2009年01月09日 (金) [長年日記]

_ [買った本]買った本

 ブックファースト渋谷文化村通り店にて。

 文庫ばかり。みうらじゅんのは、好きでもないものを好きになる試み、みたいなもので、数々の活動が纏められているが、いやぁ、金と暇が無いとこんなことできないよ(笑)。金はともかくそんなに暇な人では無いのだから、こういう無駄にチャレンジすること自体が既に趣味となっているのだろうな。こういう人生を生きてみたいとは思うのだけれど、感性の問題で商売にはならないように思うよ。みうらじゅんってそういう意味で特異な存在だ。

_ [読書][読了]『 夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)(森見 登美彦)

 なんてキュートなんだ!この物語は。

 デビュー作『太陽の塔』、次作『四畳半神話大系』と、京大生の悶々とした非モテ文学を書き上げてきたモリミーは、何と年明けに結婚を発表(2009-01-06 - 򤯤Ԥϰڤι˾ߤΤƤ)。彼が語る嫁は、まるでこの物語の表の主人公のような可愛らしさ。それと直接関係があるかどうかは分からないが、実に読んでいて幸せな気分になるコメディ小説を世に出したのでありました。今までの非モテ野郎のドロドロ部分をちゃんと維持しつつも、それを強く前向きな乙女の世界観で中和させてしまうような、そんなお話なのでした。

 そう、この黒髪の乙女、彼女はまるで「気がつかない星人((c)岸本佐知子)」のようでもあります。先輩が夜の木屋町でパンツを盗まれ、汗みどろで激辛鍋を食らおうとも、空中綱渡りをする羽目になろうとも、そんな苦労などふいっと忘れてしまいそうな、そんな笑顔をしてくれるのです。この先輩、彼女のために白の外堀を埋め尽くすような激烈な努力をしているのだけれど、一向に彼女にはその足掻く水面の下は気付いて貰えない。でも、その甲斐あってか、少しずつ、認識はされていくようです。全部で4つのお話に別れてそれぞれが京都の町や大学の春夏秋冬を舞台としているのだけれど、あの町がこんな風に不思議な世界に続いているだなんてついぞ気付かなかったですよ!

 李白さんの乗る三階建ての万国旗付きの電車や、偽電氣ブラン、ころころと転がるだるま、錦鯉の大きなぬいぐるみなどなど、モリミーワールドにはつきもののオモシロ不思議なアイテムもいっぱい。あー、去年の秋に行ったばかりなのに、また京都に行きたくなっちゃったなあ。

 この黒髪の乙女、実際にいたら可憐すぎてその上天然で、なんてあり得ませんよ。自分がどす黒く汚れた人間に思えるから架空の存在でいて欲しいけれど、モリミーがPR誌「本の旅人」2009年1月号のインタビューで「自分の理想の女性ではなく、自分がこうなりたい、と思える女性を描いている」というのはなんか分かる気がしました。

 『四畳半神話大系』と登場人物が被るので、より物語を楽しみたければそちらを読んでからの方がいいかも知れません。勿論、こちらを読んでから『四畳半〜』に行って、また戻ってくるのもよし。何度読んでも楽しめる小説ではないでしょうか。


2009年01月11日 (日) [長年日記]

_ []新横浜ラーメン博物館

 久しぶりに行ってみた。さほど遠くないのだが、なぜかなかなか足が向かない。三連休だし混んでるんじゃないの、と夫が言っていたが、わたしには前回のスカスカ具合が記憶に新しいので、かなり高をくくっていた。そしたら、人気のあるところで45分待ち、とかあってびっくり。あれは平日の夜だったことを、後で思い出した。

支那そばや

ミニラーメン  ここのラーメンが夫もわたしも一番ホッとする。鶏をベースにしたスープは澄んでいて、上品な風味。以前は太いメンマだったのだが穂先メンマに変えたらしい。記憶にないなあ、と思ったが、以前行ったときの画像を見ると、ミニラーメンにはメンマは入ってなかったらしい。今回はわたしがミニラーメン(550円)で夫が特製塩らぁ麺(1,050円)。塩は、最初はうまかったけれど、段々飽きてきたらしい。やっぱり、塩って難しいのかなあ。トッピングは葱をみじん切りにしたり、わかめを入れたりして、いろいろ工夫はしている感じ。ただ、結構行列が長い。

 以前来たときにもここならミニラーメンじゃなくて一人前食べてもいいかもね、と言っていたのだが、だったらこの度営業を再開した戸塚駅前の本店に行った方がいいかもしれない、と思う。

中華そば一力(敦賀市)

ミニラーメン  敦賀と言えば原発だよなー、とか言いつつ入店。ここはなぜかほとんど行列が無くて、あまり並ばずに入れた。ポスターや写真を見るとスープが澄んでいるように見えて、これでとんこつ醤油?とびっくりしたのだが、出てきたのを見ると典型的なとんこつ醤油ラーメンだった。ここは香り付けに黒こしょうをあらかじめかけているのが特徴のようで、確かに出てきた瞬間からぷんと香る。ただ、これが味の面でも結構前面に出てしまい、邪魔に思えてくる。とてもじゃないけどこの上テーブルに用意されている白こしょうをかけようとはついぞ思わなかった。

 店内には、地元の中学校の生徒が作ったらしい観光案内のパンフレットが置かれていて、それを読んでいると注文が出てくるのに少々時間がかかるのも気にならなかった。「地酒のことについては書いてないな」という話に「確かに」と頷く。中学生だもんなー。ミニラーメン(550円)。

こむらさき(熊本市)

ミニラーメン  ここの本店には、以前行ったことがあるのだが、あれってかれこれ20年ほど前!? 友人が住んでいるので訪ねていったのだが、ラーメン屋でお勧めのところ、というのがここだった。博多ラーメンは食べたことがあったのでとんこつには免疫があったのだが、ここのは博多のとは全然違ってクリーミィで濃厚で、びっくりした。トッピングも多く、ニンニクチップの香りがかなり印象に残る。

 前回博多のふくちゃんラーメンを食べて撃沈したので、少し心配だったのだけれど、記憶の中とさほど変わらない優しい味だ。ニンニクの香りは暴力的だが。このラーメンならバラ肉のチャーシューがなるほど合うのかも知れない。ミニラーメン(500円)。夫は切望していたビールもここでようやっと頼んだ。地ビールで、確か400円。青ラベルと赤ラベルがある。

 1Fの展示コーナーはまた変わっていて、ラーメン屋のカウンターらしきものがあった。厨房を再現しており、その傍らのテレビモニターでは、一杯のラーメンができるまでの過程が流れている。1,2度は興味深かったけど、さすがに4,5回見ると飽きるか。カウンターには、麺やスープなどの種類などについての解説があり、椅子に座って足の疲れを取りながら、何となく知識が増える感じ。この椅子席、みんななかなか立ち上がらないので、夫がたばこを吸っている間ここで休憩しようという目論見に失敗してしまった。かえって地下の広場の方がすんなり座れたかも。

 広場では、新たに射的が登場していたが、これがすごい人気。ほとんどは男の子とお父さんのコンビなのだけれど、たまにカップルで女の子の方が男の子の手ほどきで挑戦、みたいなパターンもある。お兄さんだけのときはさほどではなかったのだけれど、テキ屋風のお兄さんが入ると、盛り上げ方がうまくてさすがだなあ、と思った。こういうキャストって、確かお芝居やってる人が多いと聞いたような気がする。

 さすが連休中とあって、子どもがすごく多かった。列が長かったのも、そのせいもあるかも。やっぱり、夜に行く方が効率がいいかもしれない。

 どうせ食べに行くのなら、断然本店の方がいいに決まってる。ここはラーメンっぽいものを楽しむためにあるんだと割り切って行けば、それなりに満足はいきます。


2009年01月13日 (火) [長年日記]

_ [買った本]買った本

 ブックファースト渋谷文化村通り店にて。

 読書は進まないけど、本は出るのだー。


2009年01月14日 (水) [長年日記]

_ [読書][読み始め]『 ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)(伊藤 計劃)

 持ち歩きを前提にしていたので、書店で珍しくカバーを掛けて貰った。久しぶりの伊藤計劃。独特の文章に「おお、久しぶり」と呟く。

 時は21世紀後半。〈大災禍〉と呼ばれる人類の危機を経た後、人間がインフラと考えを変えた政府が〈生府〉と名を変え、人体を健康に管理維持するシステムを構築する。病の兆候を発見すると、WatchMeは即座に取り除き、修復してしまうのだ。と考えると、現在の、ウィルス除去ソフトが常時監視しているPCなんかを思い出すが、もうそのまんまだろう。歓迎すべきことのように思えるが、何か違和感を覚えるだろう。それは、自分自身の身体さえもが自分のものではなくなり、世の中を構成する一部となっているということでだろうか。この辺りは健康増進法なんかを制定しちゃう現代の社会にすぐ結びつきそうだし、技術的倫理的に可能となれば、双方に実のあることなのですんなり実現してしまう可能性が高い。この辺はプライバシーと利便性とのバーターなんて考える、自分の個人情報の管理なんかも関係してくるかも知れない。確かにこれらの設定は未来のものなのだが、すごく今の自分に近い状況であることが感じられる。

 「人が大事」ということが、ひとりひとりそれぞれの尊重を意味するものでなく、全体の中のひとりとしての認識であることに拒否反応を示してるのであろう少女たち、が、この物語を引っ張っていく。大人になったらWatchMeで健康管理されるのだが、成長期の子どもたちはまだ身体が安定していないので、いわばオフライン状態なのだ。オフラインの状態である間に、自分の身体を自分のものにしてしまおうと考えたのが、御冷ミァハだ。実物としての本などとうに一般的なものでは無くなっている現代にわざわざお金をかけて製本した本を読む少女。そこから、あらゆる知識を得る少女。十分に自我を持った彼女が、自分の身体を他人の手で管理されることに拒絶感を覚えるのは当然だろう。

 10代の頃を回想する形で、現在の主人公は登場する。当時は高校生、今はWHOに勤める霧慧トァンとして。彼女は戦闘地帯の最前線にいるのだが、そこでの開放感と、日本に帰ってきたときの閉塞感が対比される描写が興味深い。日本では絶えず拡張視界がものの情報を表示しており、人や店のランクもひと目で分かってしまう。この辺りはGoogleやGoogleMapから食べログなどの評価サイトにリンクされているところを重ねるかな。確かに便利だけれど、便利過ぎちゃうような気がする。絶えず他人による評価がそのオブジェクトを飾り、まっさらのものは通常、存在しない。そういう世の中なのだ。

 少女特有の潔癖さ(社会の一部として組み込まれていくことへの拒否感のようなものは、現代でもわたしたちが同年代だった頃にもあったように思う)と、今の世界から数歩先を行くテクノロジーを使っての世界構築が、わたしにはとても面白く読める。

 それと、もうひとつ面白いのが文体。目次からしてそうなのだが、マークアップされているのだ。XHTMLを思わせる(まあ、そのもののところもある)マークアップがあちこちに散りばめられている。最初は面食らうが、まあ、そういうものをさほど知らなくても、論理的な構造を示しているものであるから、少し読めば「こういうものか」と理解できることだろう。感情までもがマークアップされると言うところがちょっと面白く思った。色々、応用したくなってくる。この辺りは、伊藤さんご自身がウェブデザイナーをしていることも関係してくるのだろうなあ。

_ [買った本]買った本

 ブックファースト渋谷文化村通り店にて。

 会計を終えたあと、売れ筋商品のところをするーっと見て出ようとしたときに、ふともやしもんコーナーに目をとめる。あれ、そういえば1月中旬に再入荷って言ってなかったか?と見ると、限定版がそこに〜。会計もしちゃったから迷ったんだけど、結局もう一度列に並んでしまった。でも、某カリスマ書店員も「途中で(組み立てるのが)飽きた(その後やり遂げたかどうかは分からない)」と言っていたし、果たして飽きっぽいわたしにできるだろうか。

 「 BRUTUS (ブルータス) 2009年 2/1号 [雑誌]」は昨日ディスプレイを見てびっくりしたのだが、ノート型。大学で講義を持っている方々のバリエーションに富んだ内容を紹介している。それぞれ分野ごとにひとり。ということで、文学で柴田元幸だったり、カルチャー論で宮沢章夫だったり。買いそびれてるけど、これは駅の売店でも買えるから家の近くで買おうかなと。

 「 ウフ.2009年3月号」をゲットできて幸せ。その後、店を出るときには結構無くなってたから、やっぱりPR誌(特に人気のありそうなヤツ)は早めになくなっちゃうんだなあ、と思った。帰りに柴崎友香の女の子コラムを読んできたのだが、お題がドリュー・バリモア。紹介されている映画も甘ったるい恋愛ものばかりでどうなってるんだ、といぶかしんだのだが、そうか、彼女って「E.T.」の妹役だったのね! 子役で成功した人にありがちな転落人生を送ったけれどそこから無事生還して活躍している彼女。「チャーリーズ・エンジェル」などのプロデューサーもしてるんですってね。しかも、過去を隠さない、というのがいいとか。

 ところでここで一番びっくりしたのがこれ、「 2番目のキス (特別編) [DVD]」=「 ぼくのプレミア・ライフ [DVD](ニック・ホーンビィ)」だったこと。というか今更思い出したんだけど、ニック・ホーンビィの『ぼくのプレミア・ライフ』がハリウッドに映画化権を買われたんだった。厳密に言えば小説が映画化されたものをもう一度映画化する権利を買った、ということになるんだろうけれど。何で思い出したって、「 2番目のキス (特別編) [DVD]」の原題が"Fever Pitch"と出ていたから(パッケージにでかでかと描かれていた)。おお、あの、サッカーが野球にすり替わってる(舞台がイギリスだったからサッカーだったのだが、そのくらいのフリークというとアメリカではサッカーはあり得ないから)悪名高いヤツ。すっかり恋愛ものになってるなあ。でも、ちょっと見てみたいかも、どのように変わっているか、残っているか。しかし、邦題がこれじゃあ気づかないよなあ……。

 ちなみに、このイギリス版でサッカー狂の教師を演じているのが、コリン・ファース。このときはぼんやりしたおっさんだなあと思った(ダサいトランクスがお似合いだった)んだけど、数年後にBBCの「高慢と偏見」のダーシー役をやってるのを見て、俄然見る目が変わったよ。

 そういえば「meiren」というムックが漫画コーナーにあって、執筆陣などを見たらなかなか気になる感じ。しかも表紙が高野文子! うーん、どうしようと行きつ戻りつしていたのだけれど、つい買ってしまった。30代女性(男性もテーマになってるけど、どう見ても女性向きだ)がターゲットになった様子。定期刊行の雑誌かと思ったけど号数もないしなあ。内容は、帰ってからパラパラ見たけど、思ったよりはっちゃけてて面白いかも。

 「meiren」に執筆している安彦麻理絵のエッセイ漫画。自分と同世代の人のことから何故かその年に見えない人にシフトし(「起承転結」の「転」だね)、案の定、泰葉が出てきた(笑)。確かに47には見えないものなあ。そして1週間後にはアメリカ大統領となるオバマ氏もも同じ年であることを発見。やはりそんな年に見えない、という話になるのだが、この話の流れ、どう見てもトヨザキさんの主張ですね(笑)。誰か、オバマ氏に「あなたも丑年なんだよ!」と言ってあげてください。ところで安彦さんの写真を初めて見たけど、見慣れている絵のなかのマリエとあまり変わりないのにびっくりした。いや、もちろん全然きれいなんだけど、何となく雰囲気が、ね。さすが漫画家。


2009年01月15日 (木) [長年日記]

_ [本の話]「ウフ.」でレベッカ・ブラウンの短編小説連載開始

 マガジンハウスのPR誌「 ウフ.2009年3月号」で、レベッカ・ブラウンの短編小説の連載が始まったようです。訳は勿論柴田元幸。目次はこちらの中程にある「目次」クリックで確認できます。

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なお、内容見本ページの閲覧にはFlashPlayerが必要です。

 ところで今回の掲載は「-The Dogs-犬たち」なのですが、何と三章から始まります。もしかしてこういう形態の小説なのか?と疑った変わった小説大好きのわたしですが、それは勘ぐりすぎていたようで、何と「GINZA」に短期集中連載されていたようです(泣)。今頃知ったよ。しかし、目次を目を皿のように確認しても、3回(12月発売の139号が3回で、今月発売分には見つからないからおそらく全3回で「ウフ.」に移ってきたものと思われます)のうちの1回が見つからない(号泣)。マガジンハウスは電子版ならバックナンバーも簡単に購入できるので紙が入手できない場合はこちらに頼ろうかな。というか、こんなに連載してるんだから既に短編ではなく中編ですがな(笑)。しかし、これは痛い。ぬかったとしか言いようがないっす。年末六本木のABCで行われた柴田さんのミニトークイベントではもしかしてこの件発表されたのかな。

 因みに今号から小路幸也の小説連載も始まっており、こちらは森の中に建つ和洋折衷のお屋敷を使ったレストランを舞台にしたお話だそう。タイトルは「六条辻亭へどうぞ」。登場人物は天才肌の眼鏡男子らしいですよ!

_ [読書][読み中]『 ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)(伊藤 計劃)

 part:number=02に入ったところ。前章はかなり衝撃的な出来事で幕を閉じたのだが、その謎を追っていく形になるのだね。『虐殺器官』でもやはり謎を追っていく形だったけれど、今回はもっと個人的な衝動に従って動いているような感じなので、もっとナイーブということになるかな。でも、あまりそうは感じないのは、『虐殺〜』の主人公は兵士、しかもアメリカ人だったからことさらそう感じた、ということかも知れない。まあでも、今作の主人公トァンもタフではある。世界各地で勃発する争いを停戦させるのが仕事だから、最前線に行くことになるのだものね。そしてトァンにとって好都合だったのは、そういったところは健康管理の網から外れることが多く、不法行為(といっても禁酒法時代の飲酒のようなものだが)をするのに好都合だったからだ。トァンは、ミァハ亡き後の世界を、こういった形でやり過ごしている。

 いわば、この世界を呪って、永遠にシステムの手の届かないところに行ってしまった親友であり同士のミァハの、弔い合戦をすることになるのだろう(現在進行形でもあるのだが)。

 彼女たちにはもうひとりの友人がいる。零下堂キアンというが、トァンから見るとちょっと鈍くさい子らしい。聡明なミァハがどうしてこんな子と付き合っているのか疑問にも思っているらしいが、なんかその気持ち、よく分かるなあ。わたしもそういう風に感じたことはあるし、同じような経験をした人は多いのではないだろうか。ミァハ亡き後はこのキアンだけがトァンの友人ということになるのだが、日本の空港に(帰国を伝えてもないのに)迎えに来たキアンを見る目は、かなり残酷だ。近しいほど苛立ちも募り、悪く言ってしまう、ということだろうが。キアンは元々そういった素質があったのだろうが、かつてのミァハやトァンが忌み嫌ったシステムに絡め取られていて、それに関して何の疑問も抱いていないように見えるのだ。それがまた苛立ちの原因となるのだろうが。

 かつてのミァハの言葉を思い出す。

わたしたちは互いに互いのこと、自分自身の詳細な情報を知らせることで下手なことをできないようにしているんだ。この社会はね、自分自身を自分以外の人間に人質として差し出すことで、安定と平和と慎み深さを保っているんだよ。(p.128より)

まあ、今だって多かれ少なかれ似たような状態ではあるのだが、拡張現実(「オーグメンテッド・リアリティ」と読むが、通常は短縮させて「拡現」と表記して「オーグ」と読ませるらしい。コンタクトの形状をしており、同時にライフログのカメラともなっている)に名前や職業まで見られてしまうなんて、かなり窮屈な世の中だね、これは。ふと、昔ニフティで他の人にメールを送る場合は、通常フォーラムなどで使うニックネームではなく、本名を晒す必要があったことを思いだした。相手の領域に踏み込むのであれば、こちらもある程度の情報を晒すことになり、スパムや悪意による行為を抑制していた部分があったように思う。あれと似てはいるけど、アプローチは逆になるんだね。

 さて、謎はどうやって解けるのだろうか。

 著者の書く作品は、何となくだがやっぱりわたしたちの年代では書けないもののような気がする(あまり世代論に落とし込みたくはないのだが)。我々が、世界を肯定的に見ることができた最後の年代になったりしてな。

_ [本の話]テッド・チャンの新作が良いらしい

 昨日はmixiのマイミク日記がちょっとしたテッド・チャン村になっていたが、新作が発表されたようだ。といっても10数ページの短編(?)なのだが。そのできがとても良いということで読んでみたいものだが、英語に不自由なわたしには大まかなところしか理解できないだろうしものすごい誤解をしてしまう可能性はかなり高い。

 ので、人頼みで、早く翻訳されることを望むであります! S-Fマガジン辺りに掲載されるのかしら〜。『あなたの人生の物語』では、浅倉さんと古沢さんの手によるものが多いようなので、どちらかの方だったりすると嬉しいかも! 勿論どなたでも大歓迎ですが。

Eclipse 2: New Science Fiction and Fantasy(Stephen Baxter/Nancy Kress)

掲載誌はこれらしいね。おお、確かに拡大画像を見ると、てっちゃんの名前が! タイトルは、"Exhalation"というらしい。

_ [本の話]芥川賞は津村記久子「ポトスライムの舟」

 おお、単独受賞か。めでたい。去年は野間文芸新人賞も受賞してるし、実力と受賞が見合ってる感じなのがなんか嬉しいぞ。

 と言いつつも、まだ作品は読めてないので(古川日出男『聖家族』にかかり切りだった)、早く読まないと! 既に数冊著作が出ている人が受賞すると、本屋さんも喜びますよね。他の作品もいいし、何より読み易いので、いろんな人に手に取って貰いやすいかも知れません。

 わたしは、岸本佐知子さんが絶賛していてこの人の作品を読む気になったのだけれど、書く作品書く作品あまりダメなのが無くて、安定したテンションの持ち主だなあ、と思っています。これでとりあえず芥川賞対策ギプスとか(そんなことやったかどうかは分からないけど)取っ払ってお仕事できるでしょうから、どんどんいいもの書いて欲しいです。これからがますます楽しみ!

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メッタ斬りコンビによる、恒例芥川賞・直木賞予想

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 トヨザキさん、芥川賞大当たり! おめでとうございます。わたしも、確かに今回は田中慎弥とのダブル受賞はあるかも、納得していたのですが……。

 それにしても、直木賞は番狂わせ。トヨザキさん、大森さん共々、片方は当たったんだけどねえ。まさか、PHP研究所の刊行物が受賞するとは!

_ [買った本]買った本

 ブックファースト渋谷文化村通り店にて。

 『アフリカにょろり旅』は、去年岸本佐知子さんの『ねにもつタイプ』と講談社エッセイ賞を同時受賞した代物。受賞パーティに潜入(いや、ちゃんとある方に連れて行っていただきましたよ)した際に、受賞の挨拶を聞いただけで「うわ、この人面白い!」と思ったのだった。でも、たぶんすぐには読めないので文庫化した頃にと思ったら、案外文庫落ちが早かった(笑)。『誰も書けなかった〜』は、芥川賞発表日の今日発売された奇遇! いや、別に関係ないのだろうが。でも、中を見ると文壇に対する暴挙(?)については余り触れられていないのが残念。

 買ってこなかったが、古谷野敦による里見とんの評伝が出ていた。『 里見〓(とん)伝―「馬鹿正直」の人生(小谷野 敦)』……と思いきや、先月出ていたのか。いやあ、抜かった。ちょっと分厚くて単価もそれなりなので、購入は後回しにしたが、是非買いたい。『左利きの人々』は、まあ、気楽に読めるだろう一冊。でも、生まれてからずっと左利きだと、世の中が右利き仕様なので、不便だということにも気づかないことが多数。あと、右手もある程度使える(箸は今ではこちらが利き手)ということもあるんだと思うんだけど。


2009年01月16日 (金) [長年日記]

_ [読書][読み中]『 ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)(伊藤 計劃)

 part:number=03に突入。何となく1日に一章読んでる感じ? 昨日今日と朝の電車で章の終わりに来て、乗り換え後に新しい章に取りかかってるパターンになっている。

 でもって、この辺になってくると中途半端に謎が解き明かされてきているので(それが真実なのかどうかは定かではないが)、迂闊なことを書けないような気がする。トァンは、WHO螺旋監察局上級監察官の肩書きを駆使して、先日起きた事件の捜査を開始する。それはとても私的なもので、かつ、13年前の過去の記憶を蘇らせる作業でもあった。タイムリミットは5日間。その間にどこまで行けるか。医療系の研究者である父ヌァザが鍵を握っていることが判明し、彼の影を追うことにもなる、ようだ。因みにトァンの父は、WatchMe関連の技術を初めてきちんとした理論にした人物。家族を棄ててバグダッドに飛んだが、現在は行方不明。WatchMeを利用した位置情報発信がされてないようなのだ。そこで、トァンはバグダッドに乗り込む。

 この時代、日本からバグダッドまでどのくらいの時間で行くんだろうね。電磁自動車は不特定多数で共有されているようだが、飛行機であるところのPassengerBirdは、その名前から言っても、どちらかというとプライベートジェット機のようなものを思い起こさせる。

 因みに、この物語の「現在」は21世紀後半の〈大災禍〉の半世紀以上経っているという話なので、22世紀半ばといったところだろうか。えぇと、『虐殺器官』はまだ〈政府〉や国家が当たり前のようにあった頃の話だから、〈大災禍〉以前(というか、おそらく直前)ということになるよね。この世界観を使って次の作品が書かれるとしたら、また未来だったりするのだろうか。

 因みに、この本文で使っているマークアップなのだけれど、これって結構便利なんじゃないの、と思う。元々構造的なものなので、引用とかフラッシュバックとかリファレンスとか意味づけとか、そういうものがすごくやり易いのだ。始まりと終わりも明記されてるから、読者としても分かりやすい。ETML(各章頭に宣言されているが、Emotion - in Text Markup Languageの略っぽい)というのは著者が作った架空のものなのだろうけれど、ちょっとばかしかじった人なら面白く思えるはずだ。

 わたしはSF読み手としても超ぬるいので、こういった今の感覚と地続きの作品の方が面白く読めるんだろうと思う。ところでそういう人間なのでくすぐりが理解できなかったのだが

人間が意識をデジタル化することに成功してコンピュータなりネットワークなりに居場所を移していくってSFが。(p.157より)

って多分何か具体的な作品が存在するんだよね? SecondLifeの方が現実になってしまうような感じかしらー。

 それにしても、本作のタイトル「ハーモニー」は、結構キモ恐ろしいものなのね。上っ面だけ見ると穏やかで美しく見えてしまうところが危険なところ、って訳か。繋がっていること、絶えず監視・コントロールされていることは、ある意味「安心」に繋がるのだろう。但し、それは正しく回っている場合に限られる訳であり、負の方に利用されればとんでもないことになってしまう、というのは、ネットワーク社会に生きる我々ならば想像できることだよな。

_ [本の話]長嶋有の新聞連載小説『ねたあとに』の書籍発売は、2月6日ですよ〜

 昨年は、長嶋イヤーだった、わたしにとっては。朝日新聞夕刊の連載小説を纏めた本がやっと発行の運びになったのだ。いやー、めでたい。実は文学フリマの時に装丁家の名久井直子さんに「やっぱ1月は無理だから、2月になっちゃう」とおっしゃってたのを傍受していたのでいつ解禁になるかと待ち構えていたら、ポ祭のトークの最後、翌年1月の予定をそれぞれ言うところで間違えたのか狙ってなのか「『ねたあとに』が2月初旬に発売されます」なんて発言。その後、「有のドナタ」も配信されたので、全然OKでしょう……と思ったら、Yahooブックスe-本では予約受付中のステータスなのであった。amazon、bk1ではまだデータは無い模様。でもISBNコードも分かったので、時々検索をかけてみよう。

 価格は、1700円(1785円から消費税分を抜いた本体価格)ということでいいのかしら? さぞかし分厚くなるんだろうなあ。読みながら寝てしまいそう(笑)。

ねたあとに(長嶋 有)

_ [イベント]『 虚構機関―年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)(大森 望/日下 三蔵)』刊行記念大森望×日下三蔵トークイベント@三省堂書店神保町本店8F特設コーナー

※拙い記憶乏しい知識、と汚い走り書きメモだけにより成り立っているので、間違いなどもあるかも知れません。間違いのご指摘は大歓迎です。

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 定員50人のところが、70人ほど参加してて満員御礼だったらしい。わたしが遅れて入ってきたときも、ちょうど後ろの方に椅子を並べていた。

 そういう訳で最初の方に何が話されていたのか分からないのだけれど、わたしが聞き取ったのは「編者の名前が出ちゃうから責任重大」みたいな話。おそらく、この本の解説の最後にも出ている、出版芸術社刊行日下三蔵編『日本SF全集』(全六巻)のことかと思われる。こちらは、この本のお手本となった筒井康隆編「日本SFベスト集成」と今回の年鑑の間をつなぐことになるだろう、との話だった。大森さんからは「ちょうど埋まるけど、一体いつ出るの?」という悪魔の突っ込みが。この日は、ゲストの円城塔氏とともに編集に携わった東京創元社の小浜徹也氏も前に出ていたのだが、アンソロジーはとにかく肉体労働だと強調されていた。著者も多いからフォローも大変だそうだが、今回の著者の方々は皆さん快諾してくださり、ありがたかったとも。

 著者の方々が「いいのを書」いて、編者の方々が「ちゃんと拾う」ことが大事。今回困ったのは、雑誌の掲載小説を見ると連載やシリーズものばかりで、純粋たる短編が無いということ。因みにホラーに短編が多いのは、夏の特集(肝を冷やせってやつか)のお陰だとか。山口雅也さんが編まれている異形コレクションも「短編が無い」から始めたという話だったらしい。「SFアドベンチャー」は連作と銘打ってないけど実はそうだった、というものが結構あったりするとか。「S-Fマガジン」は、よく言われることだが非常に安い賃金と非常に安い原稿料から黒字として成り立っている(雑誌単体で黒字というのは極めて少ない)、という話だが、これはインサイダーから「違います!」という声があったとか。一体、どの部分が「違う」のかが気になるところ。因みに短篇集は長編の発行部数の6〜7掛けとなるのが通常らしい。

 円城さん曰く「 ユリイカ2008年12月臨時増刊号 総特集=初音ミク ネットに舞い降りた天使(鈴木 慶一/平沢 進/佐々木 渉/東 浩紀/増田 聡/濱野 智史)」のアレはエッセイとしての依頼だったのだとか。えーと、わたしは先日買ったばかりで未読なので、読んで確かめてみたい。それと基本的にこのアンソロジーに収録される対象作品は、商業誌に書いているとかそういう足きりもなく、大森さんか日下さんが読んでいればOKだそうで、自薦他薦大歓迎だということ。腕に覚えがある人は持ち込みしてみるとよろしいかも。小説だけではなく、漫画もエッセイも、今回は無いけど詩や短歌でもOKでしょう、おそらく。駅の構内でよく見る「私集」もOKだけど、著者に連絡取れなくなって小浜さんが困りそうだ、という話とか。因みにやはり傑作選を編んでいたリン・カーターは、なんだかおかしいと思ったら自分や周囲の友達が書いた作品を堂々と掲載していたんですって。

 海外のアンソロジーなどの紹介もこの場であった。英語ということでパイが違うし、なんか英訳されたのもOKらしいんで、かなり分母がでかい。検討された作品一覧も付いているそうで、これが年鑑SFリストにもなるのだろう。因みに、ガードナー・ワトソンによるものは、年鑑の概要だけで50ページほどあり、と言うことは邦訳すると200ページで新書ほどになってしまうのだとか。また、SFとファンタジーでちゃんとそれぞれ棲み分けができているのだとか(それだけ分母が大きいということなのだろう)。

 今までにもいろんな年鑑アンソロジーが編まれているが、途中で仲間割れしたり、版元違いで出したりという混乱があって現在6シリーズくらい並立している状態なのだそう。日本は何十年も無かったというのに……。海外のSF作家が専業で食えているかというとそんなことはなく、兼業作家が多いらしい。確かに、テッド・チャンもテクニカル・ライターをやってるものね。日本だと瀬名さんの「TRNADE BASE」とかあるけど、いやぁ、根っからのアンソロジスト体質だなあ、小鷹(信光)さんと並ぶよ、なんて話も。因みに2008年版は現在選考中なので、今だったらまだねじ込めるかも、だそうです。円城さんの作品を何か載せたいと言ったら「これから書きます」という返事だったとかで、かなりぎりぎりに大森さんが読んだとか。ポ祭のときに「帰ってこれから小説を書く」って言ってたけど、もしかしたらこれだったのかもねえ。因みに、文芸誌に書くときとSFとして書くときでは方向や心構えが違うの、という問いには「SFの方が無茶できる」という答え。納得。

 因みにこの日はメインの日下三蔵さんもゲストの円城さんも風邪による発熱で数日前から倒れており、かなり無理をしての参加だった模様。円城さん、何となく顔が赤いしやつれてるし、髪切ってないから伸びきってるし……。いいもの食べてください(泣)。確かタイトルが「Moon Shine」という数学SF。よくほらを吹いてるとか言われるけど、いつもホントのことを書いている、と強調しておられました。「調べてみるとホントにいたりするんだよねえ」と大森さん。

 あとがき問題という話もあった。各短編が掲載された後には「著者の言葉」というあとがきを書いていただくことになっていたのだが、中原昌也さんからはとうとう来なかったとか(笑)。断筆宣言してるから、一行たりとも書きたくないんだろうなあ。因みに著者校を戻してもなしのつぶてでこっちから連絡したら「そんなの来てたっけ?」と言われたが、言い方がぞんざいなのに態度は丁寧、だとか、できた本を送ると電話したら「要らない」と言われたとか、でも掲載料が入るのはいつかはしっかり聞かれたとか、中原話満載。

 日下さんのお仕事の半分は本を探すこと。家の中が混沌とした状態だということは「本の雑誌」2008年7,8月号の記事「世界の魔窟から」を観ていただければたいていの人は納得してくれることだと思うが、今回は何とか「SF Japan」は3冊のうち2冊、「S-Fマガジン」は3冊のうち8冊を発見したと胸を張っていたので、勝率6割というところだろうか。と考えると割合高いな! この本は東京創元社」から出てるんだから、短編小説をより多く掲載するために「ミステリーズ!」(東京創元社刊行のミステリ雑誌)にSF枠を設けるべきだとか、若者の萩尾望都嫌いについて大森さんは嘆いていた。「望都様の作品が読めるだけでもありがたく思わなければいけないのに!」。因みに編集部の方では「望都様の生原稿」に舞い上がっていたのだとか。

 ここで、シークレットゲスト、福永さん登場。一旦会場から姿を消してしまい心配したのだが、無事に帰還。福永さんもまた風邪を引かれて寝込んでいらしたそうで、なんかこの辺に妙な空気があるんじゃないかと邪推。大森さんには去年末のポ祭で初めてお会いしたそうだが「人脈好きな人だな」という印象だったとか。SFに関しては、SF小説は子どもに開かれているという印象があって、昔から読んでいらしたとか。古めの「日本SFベスト集成」を図書館で読んでいたのだとか。また、本という媒体は、人に渡すことができるからいいな、と思ったと、ポ祭のときに対談相手の岡田利規さんに持っていてしなっとなった本を手渡したときに思ったのだとか。このアンソロジーに採り上げられるのは、光栄だとも。

 ここでメモでは「「お前はSFだ」と著者に迫る大森さん」となってるのだけれど、多分小浜さんが突っ込んだところではないかなあ。大森さんは以前から「あれもSFこれもSF」という考えの人なので、これは態度が首尾一貫してるのかも。今回の掲載作品の選定も、SF雑誌は日下さん、それ以外を大森さんという分担だった。福永さんは編集の小浜さんが早口なことにとても驚いたのだそう。でも、本ができたときに、とても嬉しそうに「できましたよ!」と電話してきたのが印象的だったとか。これには小浜さんは「だって他の人はメールで連絡できたんだけど、福永さんだけ(実家に帰省中のため)ご実家に電話だったんですよ」とか。

 このほか、「もっとも円城塔がSFファンに近づいた瞬間」とか「四コマ漫画」とか「星新一」とか走り書きがあるけど、これも意味不明……。円城さんといえばペアとなるのは伊藤計劃さんなのに「伊藤計劃がいないのをいいことにして福永信がその座に納まろうと……」とか、また大森さんが黒いことを言っていたのは覚えてる。福永さんはこの本を読んで「SFの懐かしさ」というものを感じたとか「2007年というくくりにするのがいい」なぜなら「同時期に他の人が考えていたことが一時に分かる」からだとか。福永さんらしい目の付けどころでした。

 2008年版は、会場に駆けつけていた新城カズマ氏の作品が決まっていることと、法月綸太郎のSFで既に枠が埋まっているとか。スラデック+イーガン? 「ノックスの十戒」を逆手に取り中国人が主人公なのだとか。因みに円城塔・伊藤計劃は既に毎年枠があるそうだ。勿論それは掲載するに値する作品を書いたときのみ有効なのだろうけれど、このふたりならばコンスタントにそういうものも書けるかも、と納得してしまった。2008年版の刊行は、5〜6月頃?

 京大SF研のサイトでは2008年版に収録されるのではないかという作品の予想があったそうだけれど、大森さんはそれを見ながら抜けをチェックできて「意外な盲点」に気付くことができて感謝していた。これかな?

 編者としての資質の違いだろうが、日下さんは大森さんが大枠決まった辺りからどんどん関係者に連絡を取っていたのでびっくりしたのだとか。日下さんはちゃんと固まってからじゃないと相手に失礼じゃないかと思うのだそうだが、大森さんはまずは声を掛けて、もしも話がポシャってしまったらそのときはそのときでフォローする、という主義なのだろう。「だから5年も出ないことになるんですよ」とか(笑)。池澤夏樹だって全集は、読んでないのを入れることだってあるんだから、とか。

 最後に、日下さんが「アンソロジーは見本市」とおっしゃっていたが、わたしも本当にそうだと思う。その昔、何の知識も無かった海外文学を読むのに、特に柴田元幸さんのアンソロジーにはお世話になった。そこから、また別の作品に飛んでいったり、ある作家目当てで買って別の作家の魅力を知ったり。いろんな効能があると思う。

 この後、編者のお二人とゲストの円城さんのサイン会が行われた。結構な行列。わたしはと言えば行列に並ぶよりも前に、帰ってしまうかも知れない福永さんにサインをいただくべく突撃。「イニシャルを書いてもいいですか?」と聞かれたので若干不思議に思いつつも「もちろん、お願いします」と答えたら、「僕のイニシャル、SFなんです」と。Shun Fkunaga! なるほど。それにシャチハタのハンコもいただいた。シャチハタといえば福永さんの作家仲間の長嶋さんですよね(小説家デビューする前のサラリーマン時代はシャチハタの社員)!


2009年01月17日 (土) [長年日記]

_ [読書][読了]『 ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)(伊藤 計劃)

 いやぁ、わたしやっぱりこの人の作品、好きだわ。デビュー前の情報ではミリタリーとか攻殻機動隊ファンの人はどうとかって、全然自分の興味の範囲と重なり合わないと思っていたのに、アイテムは充分にマッチョなのに、内面がナイーヴなんだもの。デビュー作は小松左京賞最終候補に残ったのに「人間が書けてない(どこが?)」と落とされたのだそうで、フィクサー大森が円城さんと共にサルベージしたのだったものなあ。作家・伊藤計劃として世に出てきてくれてありがとう。

 時は22世紀。21世紀後半に起こった〈大災禍〉の後50年以上は経っているそうだから、おそらく22世紀半ばほどだろう。高校の同級生だった霧慧トァンは、友人である御冷キァハと零下堂キアンと共に、自殺を図る。WatchMeによって繋がれ、自分の身体が自分のものではなくなる前に命を絶とうとしたのだ。結果、キァハだけが死に、後のふたりは助かってしまう。この時代を、WHOの螺旋監察官となった28歳のトァンが時々振り返る形で物語は展開する。

 〈大災禍〉で自らの力で絶滅しかけた人類は、自分の身体は社会のリソースの一部だという思想を徹底され、周囲の人を傷つけることなどの反社会的行為を抑制されている「やさしさ」に満ちた社会を形成している。世界の大部分はWatchMeの管理サーバを置き、他国ともネットワークを介し情報やパッチのやり取りをしている。国という単位も意味が無くなり、〈生府〉というものに置き換わっている時代。子どもの頃からそんな社会に違和感を感じていたトァンは、ミァハ亡きこの世の中を凌いでいくために、監視の目が手薄になりがちな紛争地帯を飛び回る螺旋監察官となったのだ。WatchMeをDummyMeという分子で「健康体」だと認識させ、ネットワークの切れ目で酒や煙草、時にはドラッグを仕入れる。しかしそんな不法行為が上司にばれてしまって謹慎を命ぜられ、故郷の日本へ降り立つのだ。そこで、突然の集団自殺という事件を目の当たりにし、これは自分が過去に関わった事件と関係があるのではないかと勘づき、独自に調査を始める。そこに時折見えるのは、死んだはずのミァハの影だった。

 主人公は世界を股に掛けるタフなネゴシエイターではあるが、女性であること、そして自分の死んだ友人や行方不明の父親の影を追っていくという、かなりおセンチな内容である。その点、兵士を主人公にした『虐殺器官』よりも傾向がはっきりしていると思う。世界観は、おそらく『虐殺器官』が21世紀後半と推定され、この後〈大災禍〉が起きることになるのだろう。はっきりとは書かれてないが、物語として地続きであるように感じられる。〈オーグ〉と呼ばれるコンタクトレンズ型のモニターを眼に付けており、人間や店舗の評価点や属性が即座に確認できる。〈オーグ〉はそのままライフログを記録するカメラにもなっている。各個人はWatchMeの固有IDがグローバルアドレスとして登録されており、オンラインでいる限りずっとモニタリングされ続ける社会。それは、好意的に見れば「見守り」であるが、悪意で見ると「監視」である。健康を管理されることも、他人を傷つけず優しく接することも、すべて表裏一体なのである。そして、この世の人間たちは片方からしか見ようとしない。「ほどほど」でいいのに、いつの間にか突き詰めてしまい、徹底され強迫観念を募らせていく。こんな世界は、わたしたちの世界と地続きであることを、読者は早々に気付かされるだろう。

 登場するシステムやガジェットも、現代の「あれ」か、と、わたしたちの知っているもので想像できるものが多く、しかもガジェット好きにはたまらないほど様々なアイテムが登場する。〈オーグ〉は勿論、鳥のようなしなやかな翼を持つPassengerBird(飛行機に代わるもの)、骨伝導で通話できるHeadPhone、他人の家を訪問したら自分のID情報を送るためにタッチするフィンガープレート(ノックとドアスコープと名乗りの代わり)、etc、etc……。大体が、WatchMeとその監視システム自体が、ネットワークで接続されオンラインであるのが普通の状態になっているわたしたちの環境そのままだし、身体はスキャンされないものの、使っているPCはウィルスが入ってきたり不当な攻撃を受けないよう絶えず監視され、接続されるネットワークを通してワクチンを取得してパッチを当てて最新の状態にしてPCを安全な状態にすることがネットワークにPCを接続しているものの心得だと、いつの間にか思ってない? 数年前にはこんなことは「常識」ではなかっただなんて、すっかり忘れてるかも知れない。便利になり、安全になる代わりに、わたしたちは何かを明け渡している。それを、ミァハは「人質」と言った。

 絶えずシステムに監視され、安定した状態で生活を送る人間たち。さて、どこまで自動化されれば安心できるのだろう? 疾病の元になる体型の偏りも無くなり、誰もが標準的体型である世の中。コーディネーターの作るレシピに従い、料理する母。どんどん、自分自身で苦しんだりしながら決断する必要は無くなっていく。

 この小説を突き詰めていくと、「わたしがわたしでいるという意味」となるのだろうと思う。そこに突き当たったときに、途方もない絶望をわたしは感じた。誰もがつながり、調和を求められる社会では、個性というものは邪魔ものなのだと気付くだろう。皆同じようであればあるほど管理は楽になり、社会も安定する。だって、似た人ばかりの世界なのだから。そうしたら、我々はどこまで自分を明け渡すことができるのか、快適さと引き替えに。こんなことを考えてしまうだなんて、伊藤計劃という人は、この世に途轍もない絶望を感じているか、もしくはその逆か、と勘ぐりたくなる。勿論、思想を知らしめるべく小説を発表する訳ではないのだから、どちらでもないのかも知れないが。勿論、このテクノロジーは地球全体をカバーしている訳ではなく、その辺りがパンドラの函に最後に残った「希望」となるのかなあ、と思ったのだった。

 この全編に貫かれている、etml(Emotion - in Text Markup Languageの略)という記述方式。勿論、著者の作ったものだろう。HTMLやら何やらに似通ったマークアップ言語であり、感情やオブジェクトのステータスをこんな方法で表すだなんて、やられた!と思った。やったもの勝ち。

 女の子は、自分との魂の結びつきを感じて、友情を結ぶ。琴線に触れる何かがあるからこそ、親友になるのだと思う。そういう関係をうまく描いた作品でもあり、自分がかつて女の子であった頃をほろ苦さと少しの痛みとともに思いだした。読む前に、『ハーモニー』は百合小説とかいう噂を聞いたけど、わたしには少女の友情ものにしか見えないよ? それとも、最近はそこまで意味が広がってきているということなのかなあ。どちらにしても、短絡的な物言いに思える。……と思ったら、計劃氏自身が書いていたのかw。勿論、これは茶目っ気出した発言であり、本気では無いんだろう。

 とにかく、著者には元気で長生きして、沢山いい作品を書いて欲しいと思うですよ。

余談

※この件は、わたしが時系列を読み間違えていた可能性が高いです。本のあらすじ紹介のところに

21世紀後半、〈大災禍〉と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は医療経済を核にした福祉厚生社会を実現していた。

というところの年代だが、かかるところを見間違えていたようです。「21世紀後半」というのは〈大災禍〉にかかるものとばかり思い読んでしまいましたが、この作品の舞台そのもののことですね。思ったよりもスパンが短かった! 〈大災禍〉自体が、

二〇一九年に発生した北米を中心とする英語圏での大暴動〈大災禍〉によって、大量に第三国家に流出、(以下略)(p.33〜34)

と説明されていることを、ここを読んだ方からご指摘いただきました(ありがとうございます!)。

 という結論が暫定で出たので、以下の文は勘違いしていた当時の話として読んでくださいませ。

--------------------------------------------

 ちょっと気になったのが、トァンがリファレンスしたバグダッドの歴史の部分。

今世紀初頭のイラク戦争においては戦争終結後にアメリカ軍を主力とする占領軍に反対する勢力が度重なるテロ活動を繰り広げ(p.211)

って、今世紀じゃなくて前世紀じゃないの? おそらくこの物語の舞台は22世紀で、前世紀後半には〈大災禍〉があるから、その後の戦争があったとは思えないし、この後に〈大災禍〉が出てくるから、時系列で考えるとやはりその前だろう。一瞬、この後を読めば自分が引っかかっただけだと分かるだろうと思ったんだけど、勘違いでは無かったように思える。

_ [Life]喫茶店のはしごで2,200円

 午後から『ハーモニー』を集中して読むために、近所の店をはしごして過ごした。最初にイタリアンっぽい店でランチで1,000円、そこは主婦(?)集団がかなり賑やかだったので落ち着いて本を読める環境ではなく、早々に退散してカフェへ。ここで紅茶(450円)。次に別の喫茶店に移動し、最後の一章を読み切る。初めて飲んだブレンドと好物のマンデリン(750円(2杯目は半額))。この喫茶店は時々こうやって本を読みたいときに利用しており、客がいてもいなくても落ち着いて本を読めるので重宝している。調度品も良くて、椅子が実に座りやすい。

 どうしてもPCがあってオンラインだと、そっちに目が行きがちで……。意志の弱い人間です。

_ [映画][TV]「 ワイルド・エンジェル [DVD]

 深夜テレビでやってたのを、内容も知らずに録画。詰まらなかったら観ないで消せばいいので。

 で、結構面白かった。これって「チャーリーズ・エンジェル」の元ネタ?と一瞬思ったけど、チャーリーズの方は元々古いテレビドラマだったし、むしろこっちが亜流か。立場も違う女性三人が一致団結して闘うのだけれど、舞台がユーロ切り替え直前のドイツ。そのどさくさを利用して一儲けしようと考えた悪徳警官や軍人、つまりは通常は体制側である人間が実は悪人だった、というものだが(すぐに分かるし、まあネタバレではないと思う)、そういう理不尽さと闘うのが女性、というのは何とも分かりやすいし、それでいて感傷を与えるものだな、と思った。唯一の誤算は、その彼女たちが思っていた以上にタフだったこと。新米警官はどうやらただ者ではない。おまけに、メンバーには銀行家がいたりする。大金持ちのお嬢様(出戻り)の彼女は、執事にかしづかれ、金にものを言わせる戦いっぷりを見せる。高級車を乗り回し、自家用ヘリをぶん回す。はっきり言って彼女が仲間にならなければ(最初は当事者じゃない、と相手にしないのだが、それを撤回して合流する。何で二人の居場所が分かったのかは謎w)真相究明もできないし、途中で殺されて、彼女たちが罪をかぶせられて終わっただろう。

 銀行家の執事や、警官の父(やはり警官)や警察学校での指導教官など(つまりは理解ある男性たち)にバックアップされての活動ではあったが、彼女たちがタフだったことには変わりない。普通の女性にあんなアクロバティックなことできませんよ(笑)。冒頭が燃えさかるガラス張りの倉庫っぽいところからガラスを割って脱出する三人、というシーンなんだからね。そこから「何でこうなったのか」と時間を48時間戻すわけだ。途中、本丸に攻撃をしかける前にみんなで衣装を選ぶところがあるんだけど、これからすることとは別にこういう風に楽しめちゃうだなんて、女子だなあ、と思ったのでした。


2009年01月19日 (月) [長年日記]

_ [買った本]買った本

 ブックファースト渋谷文化村通り店にて。

 うわっ、「モンキービジネス」、段々追いつかなくなってきた。まずい、追いかけないと。『破戒と男色〜』はチェックしてたけどすっかり買いそびれていたもの。ブックファーストのフロアが2階層で、新書が違う階だから、チェックが薄くなるんだよなあ。一応上の階にも新刊・売れ筋新書コーナーはあるけど、全部ではないので。

_ [health]体調いまいち

 帰ってから外でごはんを食べた後、溜まった録画番組を見ていたのだが、なんか辛くて11時過ぎに離脱。妙にだるい。風邪っぽい感じもするんだけど、熱がある感じはしない。


2009年01月20日 (火) [長年日記]

_ [health]引き続き体調不良

 熱は測ってないけど、自覚しただけでも無いのは分かる。しかし、上半身の不快感、というか、悪寒も混じった感じのものは感じてちょっと辛い。しかも今朝はとても寒く、体調に悪影響をもたらす。電車に乗って、会社に来て、温かいところにいると多少和らぐけど、これって何かの兆候かなあ? 喉も少し痛いのが、風邪かも、という疑いの元なのだけれど。


2009年01月21日 (水) [長年日記]

_ [季節]取っ手が怖い

 元々静電気を帯電する体質なのだろうけれど、この冬は来なかったので油断していた。年が明けた頃からピリッと来るようになって、ここのところ部屋の出入りが恐怖だったのだ。これじゃいかんと昨晩Loftで上から下まで探しまくったけど、それらしき影は無し。もしかしてOffice Depotの方が売ってる気がする、と思い直して今日買ってきましたよ。やっぱり売り場をぐるっと回ったけど。

 買ったのはこれ。

ビー・スルーニー(クリアラメ)ラメグリーン EAS5-14

 携帯のストラップにも付けられるような小さな金具が付いている。わたしの場合は主にオフィスで使いたいので、ネームストラップに引っかけることにした。これを一度触ればいいのか、と、買ってきた帰り道にドアの取っ手を触ったらぴりり! な、なんだ、やっぱり効果ないじゃん、と泣きそうになりつつパッケージの内側にある使用例を見たら、これの先っちょの黒い樹脂部分を金属に押し当てて放電サインが出たら触っていいよ、というものだった模様。見よう見まねで2往復くらいしたけど、今のところ被害無し! やった!

 まあ、ドアの前で一瞬ではあるけどこれを押し当てるために突っ立ってる姿は不審に思われそうだけれど、背に腹は変えられず。これってやっぱり、オフィスが乾燥してるってことなのかなあ。

 因みに、夫も凄まじくて、ここ数年冬になると、並んで歩いているときに手の甲が少し触れただけで強烈なのが来ておりましたのよ。さすがに、そこまでは防御できなさそう。

 この手のグッズっていまひとつ信用できなくて今まで買ったことが無かったんだけど、輪ゴムみたな形状の腕に巻くヤツって今は無いの? そういうヤツの方がお手軽そうなのだけれど。

_ [読書][読み中]『 虚構機関―年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)(大森 望/日下 三蔵)

 ちょっと書く余裕が無くて感想書いてないですが、伊藤計劃「The Indifference Engine」、小川一水「グラスハートが壊れないように」、山本弘「七パーセントのテンムー」を読了。伊藤計劃から読むのは当然として、でも後はいつものように頭から読んでいくことにした。小川一水は初めて読んだし、山本弘は以前読書会で読んだ短編がどうにも受け入れがたく、この人の作品は合わないのかも、と思っていたのが嘘みたいにすんなり読めた。こちらも脳と意識の問題を真っ正面から採り上げていて、『ハーモニー』を読んでる身には身近に感じたのだけれど、こちらの方がよりディテイルがしっかりしてるね。まあ、伊藤作品はそこに重きを置いているのではないのは分かってるので、これでいいのだ。山本弘作品にはアンチョコがあるらしい。今までもそこに書いてあることをアイディアとして利用したことがあるのだとか。なんつーか、自分が自分でいる意味なんて、ただの妄想なのかも、と思えてきたよ。

 日本SFをこれだけ読むのも久しぶり。この前は、鏡明編『日本SFの大逆襲!』(これも全編は読んでない)ではないかな。

_ []パリバル(三軒茶屋)

ゆうらく通り入り口  ラーメンよりもカレーという話になって、急遽こちらへ。ネパール料理のお店だが、看板には南アジア料理の居酒屋と出ている。ネパールというとエベレストの麓、首都はカトマンドゥ、ということくらいしか知らない。メニューは、ネパール料理だけではなく、いろんな国の料理がメニューにあって、かなり迷う。

店内の様子空心菜の炒め物揚げ茄子の甘辛

 結局、リコメンドされていた、マトンモモ(マトンの水餃子)、空心菜の炒め物、揚げ茄子の甘辛、ダルバート(ネパール定食)を注文。これで足りなかったら頼めばいいんじゃない、と。夫が、タイ料理屋でもないのにトムヤムクンに執着してたので「これでまだ物足りなかったらね」と言い聞かせる。空心菜の炒め物は、メニューのネパール料理の説明にもあったけど、中国にも近いこともあって、かなり似通っている。少し味が濃かったのは地域性のせいかどうかは知らない(笑)。揚げ茄子の甘辛は、茄子のフリットを甘辛く味付けしたような感じ? ビールには案外合います。でも、あんまり茄子っぽい感じがしない。

マトンモモダルバード

 マトンモモは、一足先に食べた夫が「俺、マトンって駄目かも」と言い出した。大抵のものには許容力を持つ夫がこんなこと言うのは珍しい。続けて食べてみたが、確かに、マトンの臭みのようなものが鼻につく。いや、これでもだいぶ和らげてあるのだと思うし、臭みを消すためのスパイスも入っているようなのだが、このスパイスがある意味マトンのにおいも際だたせているような感じがするんだよなあ。好きな人にはたまらないと思うんだけど。まあ、こんなことを言いながらも、真ん中のペーストをつけるとだいぶ和らぐ。この風味、すごくなじみがあるんだけど、なんだったけかなあ。身近なスパイスだったと思うんだけど。今度は、鶏のモモを食べてみたいな。ネパール定食のダルバードは、カレー(豆のカレー?)、これはサラッとしている。これに、小松菜の炒め物に、ジャガイモとカリフラワーの煮物。これは、赤いこともあってカリフラワーが鶏肉に見えたが、案外うまい。カレーとライスと一緒に食べたが、ちょうどいい感じにうまかった。ライスは、バターライス? 結構なボリュームがあって、二人で分け合えばこれで十分。ビールは、サッポロ生を1杯ずつ飲んだ後、夫はエベレスト、わたしはゴルカ。どちらもネパールビールだが、味見した夫曰く(わたしの方は風邪引いてるかも知れないので、口をつけさせてもらえなかった……)、どちらも似たような感じ、と。地ビールに似てる味わいらしいが、ヴァイツェン? ただ、体調のせいかこの2杯だけでもうぐったりとなってしまい、食べ物もちょうど終わったところだったのでお会計をしてドトールで一休みした。

 全体的に、辛くはない。もちろん、辛いのを頼めば辛いのだろうし、メニューを決めたのは基本的にわたしだから、辛くないものを本能的に選んでいたのだろう。エスニック料理屋って案外高くつくことが多いのだけれど、ここはそれぞれ値段が抑えめだし、飲み物も安い。ホント、居酒屋価格で楽しめる。この日も、結局二人で6,350円。それなのに、我々がいた間に全然お客さんが入ってこなかったのが惜しい(泣)。もっとみんな行くといいと思った。

_ [health]少し好調?でも引き続き……

 今日は、昨日よりは調子が良かったとは思う。ただ、昨晩体温を測ってみたら7度1分で、今朝もそれは変わらなかった。朝と晩では普通ちょっと違うんだけどなあ。あと、リンパ腺が腫れている感じがずっとあるので、明日になっても同じ状態だったら、午前中休んで病院行ってみようかなあ……。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

_ もぐら泥 [>輪ゴムみたな形状の腕に巻くヤツ 東急ハンズには売ってました。 自分もキーホルダータイプのを使っています。]

_ にじむ [もぐら泥さん あー、やっぱりハンズには売ってましたか。昨日はちょっと体調が今ひとつだったのでそこまで足を伸ばせません..]


2009年01月22日 (木) [長年日記]

_ [買った本]買った本

 ブックファースト渋谷文化村通り店にて。

 急いでたので、どうしても欲しかったこれだけ。帰りの満員電車で読んで帰る。表紙を昼間にネット書店で見てびっくりする。りんちゃん、いきなり高校生か! 大吉40歳か! これはりんちゃんが独り立ちするまでやるのかなあ。確かに、それはそれで正しい。小学生のかわいらしさをもう見られないのは残念だけど。

_ [読書][漫画][読了]『 うさぎドロップ 5 (5) (Feelコミックス)(宇仁田 ゆみ)

 10年育てきったんだよなあ。ダイキがこんな風に育ったのもちょっと意外だったんだけど、ちゃんと努力したんだな、ってことが途中の言葉で分かる。最後の一話だけが遡って中学生のときの話になってたんだけど、いやぁ、子どもを責任を持って育てるってやっぱりそれなりに覚悟がいることなんだなあ、と思った。

 大吉が、りんと会ったときに彼女は身長120センチで、大吉は、そこがりんとの「0」だ、と言ったところとか、じーんとするよなあ。途中から突然子どもを持つことなんてとてもストレスだったろうに、この二人だったからこそできたんだろうけどなあ。

 でも、大吉が無事りんをここまで育てたことに、漫画だというのにやっぱり感動するなあ。大吉、よくやった。

 ちゃんとした感想はまた後で。


2009年01月24日 (土) [長年日記]

_ [オフ]ふわモテカール研究会

ゆるふわグッズ

 Twitterで呼びかけがあって、こんな集まりに参加してきた。タイトルは単なる口実だと思っていたのだが、ちゃんと電気ごてやその他グッズを持参する方がおり、本気だったのか!と驚いた。銀座6丁目にあるパセラでご飯を食べながらおしゃべり。が、なんだかんだ話していて、しかもテーブルの上の食べ物が片付かない状態で残り30分に! 慌ててこてを温めはじめ、終了時間も30分延長した。

 予約時にコンセントを使うことを伝えてあったのだが、部屋のどこにもそれらしきものが見当たらない。お店の人に来てもらうと、テレビが置かれている棚を移動させてやっと出てくる有様で、こんなんじゃ普通、使えないでしょ(使えないようにしてあるのだろうが)。このままじゃ困るので、延長コードを持ってきてもらった。

 部屋は、黒を基調にした落ち着いた内装。どうやらリゾート地を模しているそうだが、バリはこんなイメージじゃないと思うなあ(笑)。

 メンバーは、講師:内田麻理香さん、生徒:shinoさんyucoさん、わたしという構成。内田さんはテレビにも出演していることもあってこの手の情報に詳しいらしく(メイクさんに教えてもらったりもするらしい)、この日の電気ごても口コミだということ。わたしは子供のころ、原始的な電気ごてが家にあってピアノの発表会などのときに母親に巻いてもらった経験があるんで、なんとなくは使い方はわかるつもりで入る。それでも人が巻かれて華やかになっていくのは見ていてとても面白くて、随分と見入ってしまった。この日は持ってこなかったので結構すぐに解けてしまったが、スプレーやワックスなどでスタイリングをキープするともっと長い時間保持できるし、ウェーブもきれいに出るだろうなあ。

 わたしは髪の毛も短いし、ウェーブも入っているのでまさか内田センセイの手にかかるとは思わなかったのだが、「にじむさんを外巻きにしたい!」と技を伝授された。おかげで内田さんを除くそれぞれがゆるふわになっていて、肝心の講師の内田さんだけがストレートという状態に。本来ならばここでわれわれ生徒が先生の髪を巻いてご恩返しをするところだろうが、この後も用事がある彼女の髪を残念な状態にしてしまったら申し訳ないと思い(いや、単にそんな時間が無いだけだったけど)、泣く泣くお別れをした。

 その後残った生徒たちでコリドー街の喫茶店で一休み。ネットサービスについてとか、そんな話をしているわしら。その後、マイミクのOさんが勤めるギャラリーに赴き、展示作品を見せていただいた。マイミクでありながら実はOさんには初めてお会いした。想像というのは常に現実を裏切るものだが、裏切られることが嬉しいこともままある。まあ、要はそういうことだ。この後川崎で映画を観るというOさんとshinoさんについていくことにした。

_ [映画]「ラースとその彼女

 チネチッタ川崎で鑑賞。

 人づきあいが苦手で自分にアタックしてくる同僚からも逃げ続けている男が、ある日「ぼくの恋人なんだ」と紹介したその人がリアル・ドールだったら……そんな不条理なシチュエーションを、ラースの家族や町の人々はどのように受け止め、ラースはその中でどうなっていったかを描く作品だ。

 アメリカの田舎町に住み会社勤めをするラースは、夕食に招待しようとする義姉の誘いにさえ頑なに拒否して逃げ惑う、しかしもう立派な年齢の男性だ。すでに両親を亡くした彼は、母屋を結婚して帰ってきた兄夫婦に明け渡し、自分は傍らのガレージを一人暮らしコテージに改装してそこで暮らしている。会社の同僚マーゴはラースが好きで盛んにアプローチをかけているのだが、ラースはといえばどんなチャンスもことごとく握りつぶし逃げ去るのみだ。その様はそれぞれ非常に滑稽で、爆発的な笑いを導き出す。

 リアルドールというのはいわゆるセックス・ドールで、日本でも精巧な商品を作るので有名なメーカーがあると思う。このリアルドール社は実在するのだそうで、実際にいろんなタイプのドールを供給している。同僚からこのサイトの存在を教えられたラースは、なんと実際に注文してしまうのだ。ただし、目的はそこではない。実際に、リアルドールのビアンカを、自分の恋人として大切に扱い、客人として迎え入れる。結婚前の男女だから、もちろん節度を守って兄の家の客間に泊まらせてもらう。あのラースに彼女が!と大喜びした兄夫婦だったが、紹介されたビアンカを見て唖然とする。しかし、ここで弟を傷つけてはいけないと必死に感情を抑えて温かく迎え、長旅で体調を崩しているかも、と口実を作って、ビアンカをかかりつけの先生に診てもらうことにする。医師はビアンカを診ることを通してラース自身の心の内を探ろうと試みる。そこで、ラースが抱えてきた傷について知ることになる。

 ラースは、ビアンカを相手に人間に接する予行演習をしていたということだろう。傷ついた心を持つラースは、ビアンカというクッションを置かないと一人の大人の人間として世間に足を踏み出すことができなかったのだ。彼は、兄に「いつ大人になったと感じた?」と聞く場面があるが、ラースはおそらく心の面では子どものままで、そうすることで自分を守ってきていたのだろう。

 もっと、この心を溶かし、恢復していく過程を描いていくのかな、と思っていたが、それよりもラースとビアンカを理解し、優しく受け入れようとする兄夫婦や町の人々を描く方に重きを置いたんだなあ、と思った。ちなみに、この問題に対面するにあたって兄夫婦は町のお年寄りたちに協力を求めているが、この町のコミュニティは教会のそれとかなりの部分が重なっており、キリスト教がポピュラーな宗教であり町のコミュニティとなる国ならではのお話だなあ、と思ったことであったよ。周囲の人々の「優しさ」も、宗教的な考えも影響しているんだろうなあと感じられることでもあったし。

 この映画は「泣ける」ようで、実際、館内でもハンカチで目を抑えている人が多かった。それぞれがそれぞれの泣きどころがあったのだと思うのだが、残念ながらわたしは全く泣けなかったしこみあげるものもなかった。最大の泣き場はあの場面だと思うのだが、それを見てふと「茶番」という言葉がにょっきり頭の中に飛び出してきてしまったのだ。いや、もちろんラースは茶番を本気でやっていて、これを経ないと人生の次のステージに行けないわけで、彼自身が「これではいけない」と感じたからこその行動だったのだと思う。それは全く正しく、そしてこんな方法を取らざるを得なかったラースには本当に同情を覚えるのだが、じゃあ、ビアンカの立場はどうなるの?と。ああでも、こういう「茶番」で締めくくることで心も物体も始末で来たのだから、それでいいのかなあ、やっぱり。いや、わたしもどうやって終わらせるのだろう、とそれが心配だったので。と、こんなことをぐるぐる考えていたら、全然泣けなかったのだ。くだらないドラマでも泣くわたしがだ。

 わたしが一番好きな場面は、同僚のマーゴがほかの同僚と席にそれぞれが飾っている人形について諍いを起こし、傷ついた彼女をラースが独特のやり方で慰める場面。フィギュア大好きなその同僚は、宝物を隠された仕返しにマーゴのテディベアを縛り首にしてしまうのだ。白いUSBケーブル(確か)をロープに見立てそんな仕打ちを受けたマーゴは泣きながら休憩室にやってくるのだが、そこにラースが居合わせる。ラースは、優しくケーブルを解き、テディベアに人工呼吸を施すのだ。小さなぬいぐるみの胸を指で押し、口を近づけて息を吹き込むしぐさをする。こんなちょっと子どもじみているが細やかな思いやりって、マッチョな男性にはまず思いつけないと思うのだ。でもって、マーゴがラースを好きになったのも、たぶんこういった繊細さや優しさを持っているからなのだろうなあ、と感じることができるとてもいい場面だった。

 義姉が、孤独なラースを思う気持ちは温かく、夫である兄も最初はマッチョで弟を見くびるいやな奴だと思っていたが、本気でラースの茶番につきあい弟の行く末を見守るようになっていくのを見るとなんだかいい人に見えてきたよ。

 パンフレットを見ると、ラースとビアンカの件がきっかけで、ばらばらになっていたコミュニティもひとつに纏まっていく、なんて書かれていたけど、そういうところはいまひとつ感じられなかったかなあ。あと、ビアンカ、日本ツアーしたんだ(笑)。そんな、ちょっとしたお遊びがあった。

 地味だけど、ことあるごとにふと断片断片を思いだしそうな映画だなあ、と思った。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

_ shino [以前、某氏に言われたことがありましが、「この人は言ったことを本気でやるから」って。いや、本気でネタを実行しちゃいます..]

_ にじむ [shinoさん、どうもお疲れさまでした。「やりたいねえ」と言ってそのまま言うだけ大将はあまり好きじゃないので、どんど..]


2009年01月25日 (日) [長年日記]

_ [イベント]第2回 世界バカミス☆アワード!!投票イベント&授賞式@青山ブックセンター本店カルチャーサロン青山

 予約も入れないでふらりと訪れる訳が、またもや時間を1時間間違えてしまった。仕方ないのでまたもや近くの喫茶店で時間をつぶしていたらあっという間に開催時間になってしまったので、慌てて店に戻る。会場に入ったが、壇上にいる五人の方々の内、杉江松恋さんを除く四人の方々を誰だか存じ上げないという困った状態だった。お話を聞くうちにだんだん分かってきたので、まあこれは無問題。

 すでに受賞作品は決まっていると思っていたので、この場で投票するという話を聞いてびっくり。そうか、今までの皆さんの作品解説は、選に漏れてしまった作品を紹介するとともに、最終候補作として残った五作のプレゼンという面もあったんだね! いや、みなさんバカミス愛に溢れていて、どれもこれも面白く思えましたよ。プレゼン技術、楽しませつつ作品に興味を持たせる技術は、やはり杉江さんが頭ひとつ抜けてる、といった感じではありました。杉江さんが紹介すると、なんでも面白く思えるんだよなあ。

 会場のみんながそのプレゼンの結果どれを読みたいと思ったか、もしくは実際に読んでどれがよかったか、五作品のうち三作品にチェックを入れて回収していただく。ちなみに、この日は筆記用具を忘れてしまい、係りの人にお借りしようと思っていたら、隣の女性が貸してくださった(ありがたい!)。皆さんのお話への反応の様子など、随分お詳しい人なんだろうなあ、と思っていたのだが、なんと国書刊行会のウッドハウス全集を手掛けていらっしゃる森村たまきさんだったと後で知った次第。納得!

 集計が終わるまで壇上でバカミスについてのトークが続いていたのだが、小山正さんが「バカミスは読書の幅を広げる」といったことをおっしゃっていたのが印象的だった。また、会場にいらしていた『 ジョニー・ザ・ラビット(東山 彰良)』(ノミネート最終候補作)の東山彰良さんからも一言があったが、『ジョニー・ザ・ラビット』の話でセルバンテスが出てくるとは思わなかったですよ! わたしは、この作品が一番読みたかったのでこちらに投票しました。

 結果は、ゲストでもある鳥飼否宇さんの『 官能的――四つの狂気 (ミステリー・リーグ)(鳥飼否宇/アランジアロンゾ)』が見事一位となった。東山さんの『ジョニー〜』は、惜しくも二位。杉江さんが「よかったー、『 THE BOOK WITH NO NAME<上>(Anonymous/成川 裕子)』だったら「バカミスくん」どうしようかと思ってたんだー」とおっしゃっていたが、そうか、この著者の名前は不明、となっている(だからアノニマス)から、贈りようが無いのか(笑)。そういう意味ではご本人に授与できてよかったですわなー。いや、『名もなき書』以外の海外作品が選ばれたとしても、贈られた側も困るだろうなあ、と思うのだけれど(笑)。

 みなさん手弁当でのイベント運営であることが垣間見え、情熱が感じられるイベントだなあ、と思ったことでしたよ。スタッフの皆さま、お疲れ様でした!

 わたしとしては、このイベントに行ったお陰で、ここ数年人から噂だけを聞いていてランデブー失敗を繰り返していた方にやっとのことで出会えて嬉しかったです。

_ [買った本]買った本

 青山ブックセンター本店にて。

 ハードボイルドなんだけど、ウサギなんですよ、ウサギ!


2009年01月26日 (月) [長年日記]

_ []都築響一さんの月イチスナック

玉串  ちょっと声をかけていただいたこともあって、新宿某所で月イチ(不定期と聞いていたが、都築さんご本人によればこうらしい)で開催されるスナックにお邪魔してみた。22時オープンということなので、会社帰りに行くにはちょっと間が開くなあ、と考えていたのだが、そうか、一旦帰ればいいのか、と思いついて、早めに仕事を引けて家に帰って軽く夕飯を食べて再び都心へ。今回が初めてなのでどんな感じか分からなくて緊張していたのと、あんまり賑やかなときで落ち着かなくても、逆に開店してすぐ行って超張り切ってるように見えてもなあ、とか、妙な自意識が邪魔して20分ほど遅れて行った。が、一番乗り(笑)。でも、後々考えると、ほぼ都築マスターとこのイベントのときのみママをやる普段は某出版社の編集者の方を独り占め状態だったので、いろいろとお話ができた。

 わたしが入ってきてまもなく来た方が、秘宝館を研究しているという方だそうで、少し前にも都築さんと一緒に北海道の秘宝館に行かれたのだそう。どうして秘宝館に興味を持ったのか、とか、いつ頃初めて秘宝館に行ったのか、とかいろいろお聞きしたが、実はこれとこれが意味的に繋がっている!とか聞いてびっくりした。面白い! 次に来た方は売れっ子占い師。某書店員の方ととっても似たかわいらしい方で、しかしこれがいろんな職業を経てこられた方という話を聞いてこれまたびっくり。都築さんご自身がそうだからなのだろうけれど、実にいろいろな方が顔を出すのだ。この辺りから、もうカオス状態。あ、そんな中で、マイミクのAさんも来店。「えー、どうしてー」って思ったけど、むしろわたしがそう思われる側だわ(笑)。

 入場料1000円で、飲み物一杯につき500円。結局、3杯ほど飲んでタイムリミットとなったのでお暇した。途中から、この日のだけために導入したカラオケセットが大活躍。へえー、借りられるんだ、こんな感じで。

ご機嫌の都築さん  都築さんご自身、今、ヤクザ風ファッションと、スナックのママやホステス的ファッションに興味があって、フィールドワークしているところだそう。この日のお召し物もモノトーンではあるものの薔薇の模様の上下で、でもジャージ素材っぽくってとても着易そうだった。このお話をウェブサイトで公開してもいいですか、ということと、都築さんのお姿を写真に撮ることは、ご本人に許可を得てます。実にフランクにOKしてくださった。ありがとうございます!

 また、次に参加したいと思います! お遊びとはいえいろいろと大変でしょうのに、今晩は夜通し、なのだそうですよ。お店は、この日定休日の某文壇バーをお借りしてのもの。ということは、次回も月曜日なのかな?

 現在、都築さんが取材してレポートしているスナックについてのサイトがこちらにあります。さすが面白くて、今後も更新が楽しみ。

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_ [買った本]買った本

 ブックファースト渋谷文化村通り店にて。

 三崎亜記の新刊……このトレーシングペーパー様のカバーって、保存に向かなくていやなんだよなあ。手の湿気も覿面なので、これだけお店でカバーをかけてもらった。

_ [読書][読了]『 ベンジャミン・バトン 数奇な人生(スコット・フィッツジェラルド/都甲幸治)

 角川文庫から出るやつでいいかなあ、と思っていたのだけれど、訳が都甲幸治さんであることに気づいて急遽方針変更。イーストプレス版を買った。こちらが良かったのはもうひとつあって、ベンジャミンがどんどん若くなっていく様子を、年代別にポートレートとして挿入してくれているのだ。でもってこのイラスト、テイストからいっててっきり和田誠かと思っていたのだが、訳者あとがきで別の方であることを知った。

 生まれたときに年寄りで、どんどん若くなっていくという奇想。なんとなく、そういうのも面白いかも知れないと思ってしまったのだが、読んでいるうちに段々とそんな楽観的にはいられないことに気付いてくる。そして何より、終わりが見える人生なんだよな、これは。だって逆算の人生だから。そして、今までできたことがどんどんできなくなっていく。そのことについての悲しみも痛みもあまり感じないのが幸いなのか、不幸なのか。

 非常に淡々とした筆致で、一部、生涯の伴侶(と思っていた人)と出会ったあくる日の場面か。周囲の光景が美しく見えるのは、まさしく恋をしたからだろう。映画ではこういうところを使いたかったのだろうが、映画で感動した人が原作読んだら、ちょっとがっかりするかも。あんなにドラマチックじゃないもの。でも、人生なんてこんなもんだろう、という著者の声が聞こえてきそうだ。

 外見と実年齢がそぐわないこと、そして、周囲が彼に誰も理解を示そうとしないことでベンジャミンは傷ついただろうか。それとも、そんな人生を送ってきた彼にとってはいたって「普通」のことだったりするだろうか。そう、彼の周囲の人間は、彼の奇病について、深く考えないし誰も真剣に受け止めないのだ。どう見たって「若いふりをする」にも限度があるだろう! ベンジャミンの不幸は、一度も「生涯の友」を持つことができなかったことかも知れない。しかし、それさえもが人生の最後にはまっさらになり、不幸も感じなくなっていくのではあるが。

 映画版のストーリーを読むと、だいぶ設定を変えているようだ。ちょうど、駅のエスカレーターに沿って貼ってあった年代別のベンジャミンの画像を見たが、小説で読むよりもやはり衝撃が強い。

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2009年01月27日 (火) [長年日記]

_ []小花の牡蠣湯麺(有楽町)

牡蠣湯麺

 お昼は久しぶりに中華料理の「小花」で牡蠣湯麺(1,100円)。こちら、いつもお昼時は外にも中にも強烈なおばさまがいらして、素通りしづらいので「ここに行くぞ」と決めているときじゃないと前を通りにくい。今日は決めていたので堂々とお店へ。相席の丸テーブルに通された。

 ここは、なぜかザーサイをトッピングしたご飯が出てくる。無料サービスらしいけど、ご飯はいらないかなあ、と思っていたら、ほかの人が「ご飯いらないからザーサイだけ頂戴」と注文していた。この手があったか!

 牡蠣湯麺は、冬場のみのメニューで、生食用の立派な牡蠣を下味をつけて軽く片栗粉つけて揚げたものが6個ほど(数えてみた!)トッピングされている。そのほかに、ターサイ(食感が似てるので、茎の幅が違ったけど以前は青梗菜と書いてしまった)とエリンギ、白ネギが載っている。牡蠣を揚げた油があっさり目の醤油味のスープに溶け込んで、うまみが加わっているのがまたいい。

 あー、うまかった。わたしのとっての冬の味です。年に1,2度食べれば満足なのだけれど、ちょっとだけ、メニューが変わった時にはさびしくなるかな。

 お店に入ってくる人の8割は、この牡蠣湯麺かここの名物坦々麺かどちらかを頼んでいる感じ。

_ [買った本]買った本

 ブックファースト渋谷文化村通り店にて。

 ちょっと荷物がかさばっていたので、買いそびれていたこれだけピックアップ。

_ [読書][漫画][読了]『 BAROQUE ~バロック~(3) (シリウスコミックス)(小川 彌生)

 ん〜、こういう連載ものって、やっぱり3巻くらいが停滞期になるのかなあ。細かいところのやり取りや、クマンゴ(中身はシブい男ピラネージ卿)が掃除機かけてる様子など、ずっこけ部分はとってもいいのだけれど。

 2巻までで大まかには世界観が分かったことで一段落ついてしまい、あとはラストに向けての大ネタの前の助走、といったところだから、そう感じるのだろうか。2巻までは強力な敵だった黒髪の少女は実はトランスの妹ということが分かり、温は彼女の面倒を見ることになる。実は、こうなった経緯をすっかり忘れてて、冒頭の目覚めの場面で温は別の意味で焦ってたけど、わたしは「殺られる!」と慌ててしまったよ。2巻は読み直さないとこりゃ無理だ(感想も書きそびれている)と分かったので、今晩にでも読んでみる予定。

 今回は、エーリアス(ミーア=美亜)が味方側になるので、別の敵が出てくる。それが高校の英語教師としてトランスらに近づいてくる辛。彼女もまた温と同じ「透過者」で、彼女を操る「ドクター」が、トランスの花嫁としようとしているらしい。そうすることでどんなメリットがあるかとかそういうのはさっぱり分からないんだけどもっと分からないのがこの「ドクター」側につくらしいトランスの最後のシーン! えー、そりゃないっしょ。でも、これは単にトラップだったりするのかなあ。

 ミーアが温を好きで、彼の言ったことならなんでも守る。学校に入り、一般人と接し始めた最初こそ勝手に相手の心の内を読んで「お前こう考えてるんだろ」と指摘してしまいうろたえさせる(まあ、大抵ろくなことを考えていない)のだが、「それはいけないことだ」と諌められる。程度を知らないので悪い奴らに唯々諾々と連れ去られたりするのだが、代わりに温と協調するという能力があるらしく、二人でテレパシーのようなもので通信できるっぽい。しかも温はその力を使って、テレキネシス的な力まで発揮してしまう。うーん、確かにトランスよりもミーアの方が相性よさそうだけど、どうして彼女を出してきたのかが不明なんだよな。温はトランスの花嫁(候補)な訳だから、何ももう一人同じようなキャラを出してこなくてもいいんじゃないかと思うんだけど。何かの複線?

 温の幼馴染の緋陽子(ひよこ)が今回はキーになっていたようなんだけど、こちらの扱いも中途半端なんだよなあ。美亜のお目付け役のようなことを引き受けるんだけど、途中から辛先生に操られて、温たちを裏切ろうとしたりする。けど、結局暗示が解けて元に戻ったのかな?

 キャラは十分魅力的だし面白い。テンポもいい。ストーリーも、骨格はちゃんとあると思うし、世界観もしっかりしている。けど、3巻は……。1巻から楽しみに読んでいる人は当然読むだろうけれど、3巻だけ読んだ人(いるのか?)はがっかりしないで!


2009年01月29日 (木) [長年日記]

_ [reply]すべての道は××へと通ずる

dannna_o Blog:

 ちょっと過去の日記を漁っていたら、yucoさんにリアルでお会いしたのは2002年12月9日だったことが判明。hnsの日記データの変換、失敗しちゃったんで結局その後やってないんだけど、手動でもやった方がいいかなあ。

 ちょうどレッシグ博士と山形浩生さんのトークイベントがあったときに、その後の打ち上げにと声をかけていただいたのがきっかけ。その少し前に掲示板からリンクしてもらったことが初めての直接的接触だったかなあ。わたしも、それ以前に何度か見たことがあるサイトだったのは確か。

 そういえばこのときはジョニイさんも会場にいらして、その後おぎのさんと三人でお茶したのを覚えてますよ。これが読書系以外のアプローチで初めて会ったルビイストだったかも。

 「書ける人」というのはわたしには当てはまらないけど、そういう人とは随分出会ってきましたねえ。「これもウェブサイトやってるからだよね」とは、当時よく言っていたことだけれど、まだこんなにウェブで何かを書いたり表現したりすることの裾野が広がってない時代、ではあった気がする。あと、当時飲み会に来る人の紹介の意味でMLでウェブサイトのリンクしたりすると、やたらと独自ドメインの人が多かったのも覚えてるですよ。

 まあ、そういうクラスタの人が書くものがオオタカさんの好みの方向、とは言えるかも知れませんね。

 タイトルは、うまいこと言葉が浮かばなかったので伏せ字にしてみました。

_ [読書][読み中]『 虚構機関―年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)(大森 望/日下 三蔵)

 地道に読んでます。今、福永さんのところまで来た。順番に読んで(でも一番先に読んだのは一番最後の「The Indifference Engine」だったりするけど)印象に残ったのは、「The Indifference Engine」「羊山羊」「パリンプセストあるいは重ね書きされた八つの物語」「声に出して読みたい名前」「ダース考 着ぐるみフォビア」「それは確かです」「バースディ・ケーキ」かなあ。まあ、予想通りの結果だけど、今のところSFバリバリの人の作品も、結構楽しく読めている。まあ、短編だけにそれほどごついのは入らないのかも知れないけれど。特に、合わないと思っていた山本弘が結構普通に読めたのは収穫。

 感想書かないと忘れちゃうので早く書き留めておきたいのだけれど、ちょっと今余裕がない。少しずつ頑張るよ。ちなみに、読み手としてちゃんとした軸を持っている訳ではないので、とてもじゃないけど考課表(PDFなので注意)には参加できない。

_ [Bar]バーで4杯

ラムのロック  会社の関係の新年会を1次会で辞し、八重洲のバーへ。ここは、毎日やってるので「今日は何曜日」とか気にしなくていいから嬉しいのだけれど、どうやら今年からは外にチャレンジするようにしようとしているとのこと。交代でかどうかは分からないけど、週に1日休むことにするらしい。確かに3年間無休でよく頑張ったと思うし、外から刺激を受けることも大切だから、いろいろ吸収してほしいな。

 この日は、少し早めに来たので、結局4杯飲んでしまった。

ステーションハイボール→ラム+みかん→ブラディマリー→ラムのロック

 この店のブラディマリーが好きなのだが、なんか味が変わったな、と思って聞いてみたら、トマトジュースを変えたらしい。そのついでに、少しスパイシーな感じに味を変えたのだとか。わたしは以前の優しい味の方が好みだったような気がするが、これはこれでおいしいと思う。慣れるともっとおいしく感じるようになるかな。

 この日は、行ったときは誰もいなかったのに、わたしが来てから急に来店が増えて、なんだか福の神になった気分だった。単にタイミングの問題だったんだろうが。

_ [買った本]買った本

 八重洲ブックセンターにて。

 リファレンスに持っておくにはいいかと思って買ってみた。あと、絶版DVDの「ジェニイの肖像」が付録で付いてくると書いてあったのもきっかけになったひとつだけれど、これがどのくらい貴重なものなのか、映画通でもないわたしにはさっぱり理解できてないのだったw。

_ [季節]いやな天気

 夜歩いていると、大丸のビル辺りが霞んで見えた。結構湿気があるということだよな。この夜の外気は妙な冷え込み方で、これって覚えがある、と記憶を辿ると、梅雨時の冷え方だった。ああー、これが一番嫌いなんだよな。あ、いや、もっと嫌いなのは蒸してしかも暑いことか。


2009年01月30日 (金) [長年日記]

_ [買った本]買った本

 ブックファースト渋谷文化村通り店にて。


2009年01月31日 (土) [長年日記]

_ [読書][漫画][読了]『 深夜食堂 3 (ビッグコミックススペシャル)(安倍 夜郎)

 今年度のマンガ大賞候補作ともなったが、中でも一番地味な作品かも。連載中の「ビッグコミックオリジナル」のサイト内に作品の雰囲気が分かる試し読みコーナーがあるので、未見の方は是非閲覧してみてほしい。一見不器用そうでそっけない作風だが、ページから立ち上ってくる空気は温かい。

 ところで、著者の絵はとても丁寧だけれどどこかぎこちなさがあり、うま下手風の絵、となんとなく思っていたけど、「ちくわ」の段で中に入れるきゅうり(よくお弁当に入ってたよ、うちでは)のアップを見たときに、そのリアルさにちょっと驚いた。決して下手では無いんだよな、やっぱり。しかし、リアルすぎる絵は、この作品には必要ないのだろう。適度にデフォルメされ、適度に省略された絵柄が、この大いなるマンネリ感を醸し出す。この作品はまだ三巻だというのに、既に10年続いていてもおかしくなさそうな雰囲気を持っていて、しかもそれは決して悪い方に響いていない。ページを開けばそこにあるという安心感。それは深夜0時を回ると開くこの店にも通じていて、何よりも「そこにある」ことの安心感を感じさせるのだ。下手な冒険は要らない、下手な演出も要らない。まるで、この店がそのまま雑誌に存在するようである。

 ところで、やはり夜なのでみんな酒を片手に何かつまみでも、という注文をする。メニューにないもの、といっても、そこまで無茶なことはしないのはいわば暗黙の了解だろう。そんな中、そんなものなどぶっちぎってしまう人もいる。ここでいうと「ビーフストロガノフ」の女性とか。こんな一杯飯屋の風情の店で、誰がビーフストロガノフを頼むだろうか? だったら洋食屋にでも行けばいいのだ。しかもいつも突然だ。時間がかかって待たせちゃうから食べたい時は前もって言ってね、と言ってあっても。もちろんそんなことをするには彼女なりの理由があり、この店の主人や常連は、その事情を知っても、心配をしても敢えて口出しはしない。ここはいろんな事情を抱えた人が来るから、いちいち首を突っ込んでいては身体がもたないのだろうが、客もまたそんなことを望んでいないからだろう。そういった付かず離れずの距離感が、またいいんだろうなあ。よくもまあ知り合いや離れ離れになった家族に出会う店だな、とは思うが、それはまあ、ファンタジーでもあるので見逃してみる(笑)。

 ここに来る客はとても幸せには見えなかったり、一見不幸ど真ん中に見えるのに実は本人としてはとても幸せだったりして、世間の物差しが通用しないことが多い。まあ、それに伴う食べ物も、他人から見ると「何それ」というものもあったりするのだが。そんな中で失敗したり立ち直ったりして行く様を穏やかに見守り、やってきたらいつもと同じように出迎える、そんな「素っ気なさ」が店も客も読者も長持ちの秘訣かも。食べ物を通してみる人間模様。食べるときってその人の本性が出るものだものね。その人の好むものならなおさら。